諳んずるん(骸とツナ
「こっきょうのながいトンネルをぬけると」
今日の国語の授業で先生の言う暗記法を伝授された。
さて、早速やってみよう。

あいうえおん

国語のリボーン先生が「声に出せば、どんなダメツナでも頭の中に居座る悪い虫を弱らせられんだろ」と言っていた。
たかが午前からぶっ通しで寝てただけなのに悪い虫とは言い方が酷い。まぁダメツナなのは認めるし成績も悪いからあながち間違っちゃいないけど。
なので次のテストで見返してやろうと考えて俺は早速中庭の木陰のベンチに座り実践する。
だけど程よい気温と過ごしやすい木陰で少し眠たくなる。
「こっきょうのー」
やけくそになりつつ音読。先生嘘ついたな、余裕で眠くなるじゃないか。
「くにざかい、だと思いますよ」
ふと、声が聞こえてきた。
その柔らかく、笑みを含んだ声は、俺の丁度真上から降ってきた。
俺はその声の方を見上げる。
木の上に座って俺を見下ろすその人。思えばそれが出会いだったような気がする。
「えーと、くにざかいって読むんですか?これ」
あまり顔がよく見えないがとりあえず問い返してみる。
「えぇ、以前習ったときそう読みましたよ」
「へぇー、こっきょうだと思ってた」
「まぁ、そうも読みますからね」
くすり、と笑う。
「というかそこで何してるんですか?」
上を見上げながらそう問う。
「いいお天気なので、日向ぼっこでもしようかと思いまして」
「確かに、いい天気で眠くなりますよね」
「クフフ、眠くなったらいけないのでは?」
独特な笑い声と共に忘れかけていた目標が帰ってくる。
「あー、そうでした。俺暗記しようと思ってたんでした」
「なら、頑張ってください」
楽しそうな笑い声。
すると、遠くから俺を呼ぶ声。
「あ、じゃあ俺行きます!」バタバタと駆け出す。
そして明日、独特な笑い声の少年六道骸が転校してくるのであった。
      -fin-
「沢田さん、ちゃんと暗記できました?」
「あ、六道君ってあの時の木の上の人?」
「はい、先日は学校見学に来ていたんです。これから、よろしくお願いしますね」

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あきゅろす。
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