錯覚(ヒバ綱)
ある休日の昼下がり、君はソファでごろごろしながらじめっとした空を見ながら笑うんだ。
僕はその隣、寝転がりながら君のそんな姿を視界の端に捕らえるんだ。

好きになる瞬間

ひとしきりごろごろした後、彼がぽつりと言った。
「恋って所詮錯覚なんですよね?」
いつもの雰囲気からは想像できないことを言い出す。
僕はそれを怪訝に思いつつ問い返してみる。
「急にどうしたの?何か心理学の本でも読んだ?」
「名言とかにあるんですかね?」
彼が少し肩をすくめて笑う。
「それ、分かってなくて言い出したわけ?学ないね」
僕が少し眉を顰めつつ言う。
「うるさいですー俺がバカだって知ってるくせに」
かわいた笑いをこぼしながら彼が反論する。それ、自分で言ってて悲しくならないのかな。
「で、それがどうしたっていうの?」
本題に戻ろう。彼が言い出したことだし、結論を聞かなきゃ。
すると一瞬の間の後に彼が横目で窓の方を眺めながらポツリとつぶやく。
「…いつか俺も正気に戻っちゃうんですかね」と彼。
僕はなんとも言えない表情で彼の方に向き直る。顔をしっかりと彼に向けて、彼がこっちを向くまで待つんだ。
そして一言、彼に言うんだ。
「大丈夫でしょ」って。
だって僕が何度でも錯覚させてあげれば問題ないでしょ、って。
「僕が君を何度でも錯覚させてあげるからさ」って君に言う。今の僕、かっこいいかも、とかちょっと柄にもないことを考えて彼を見る。
すると彼は目を点にした後、へらへらと幸せそうに笑う。
「何?」と少し不機嫌さを露わにしながら彼をにらむ。
彼がびくっと肩を揺らし、おずおずと彼が言う。
「雲雀さん、…今ので239回目の錯覚です」
「それは惚れ直したっていうことでしょ?綱吉」
「いや、別にそういう訳じゃ…?」
「素直に惚れ直したっていいなよ」
くすくすと二人で笑う。
少し茶化した後で、おやつにでもしようか。美味しい紅茶を草壁が買ってきたんだ。
        -fin-

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