心拍(暗め
休みの日なのにスーツでお出かけ
君のいない部屋がこんなに広かったなんて、今始めて知ったよ

心拍

周りの人の声も聞こえない。
哀れむ声も耳に入らない。
目に入るのはただの君の写真だけ。綺麗に、優しく笑う君。
花に埋もれてしまった君だけ。君以外モノクロの世界。
神様は残酷だ。いっぱいの水分が失われていく。
もう失われる水分もないくらいだ。
いっぱいの水分が失われていく中、僕は何を考えればいいんだろう。
僕は何を思えば救われるのだろう。
君の面影の残る部屋に一人。立ち尽くしたまま。
不意に座り込んで、また水分は失われる。
不意にソファーに座り込んでもまだ水分を失いつつある今。
君を思う以外に何もすることがない。
いつも君と連絡をとっていた携帯電話が鳴る。
いつも君が料理を作っていたキッチンがある。
いつも君が聞いていたCDが並べられた棚がある。
そして初めて君と撮った写真。
いつも君が生活していた痕跡の残りすぎている空間で
今、今、今、僕はどうすればいいのだろう。
どうすれば君のいた思い出をなくすことが出来るのだろう。
「沢田綱吉、勝手に死ぬなんて少しばかし酷いんじゃない」
もう応えてなどくれないと知ってはいたけれど一度だけ呟く。
「僕を残して逝くなんて約束、した覚えはないよ」
雲雀恭弥はまたそう言って目を閉じて膝を抱える。
君のいない空間に、君のいない世界に僕は何をすればいいのだろう。
君のいない空間で、君のいない世界でも僕は今、心拍が続けられる。
     -fin-
出来心です。切ない感じを書きたくなりまして。暗めですいません。


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あきゅろす。
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