信じる(雲雀+ツナ
「人を信じるのと人から信じてもらうの。難しいのは人を信じる方なんだってね」
至って興味なさ気に空を仰ぎながらそう言った。

信仰

急に喋りだした彼を一度振り返り、いつもと変わらず足を組んで寝転がる彼の姿を見てまた正面を見据える。
「急に、どうしたんですか」
そんな答えてもらえないとわかっている質問をする。
フェンスから見える景色は相変わらずのままだ。野球部の声援、テニス部の応援。様々な音があちこちで聞こえる。
案の定その答えは帰ってこなかった。
「人の求めていることを与えることで信用を得ることは簡単に出来る。けど、実際は求めてることを見つけること自体難しい。そして、人の求めることをいざ与えようとしても、その人が受け入れようと思わなければ与えるのも難しい。だからどっちも成立させることは難しいんだよ」
代わりにそんな理屈を並べられる。
「はは、難しくて俺にはわかりませんよ。雲雀さん」
少し笑って、フェンスを小さく握り締める。
彼の言いたいことが少しだけわかった気がしたからだ。
そのわかった気は、間違えてないと直ぐにわかる。
「彼は、僕に六道骸と戦わせると言ったね。でも、一度もそんな機会は与えられない。だから僕は、君たちが信用できない」
すらすらと、歌うように続ける。
「君たちは僕のことを勝手に、一方的に信用してるかもしれない。それでも僕は君たちを信用することが出来ない。ただの一度も、だ」
自嘲気味にも聞こえる声色で言う。
「それが何を表すかわかるかい?組織の上で重要な信頼が得られてない組織は組織として成り立たない。つまり君の組織は今までの一度も成り立ってないわけだ。笑えるね。イタリア最強の組織も堕ちたもんだ」
本当に愉快そうな声で小さく笑う雲雀。
足を組んで寝転がったまま、空に浮かぶ雲をじっと見つめる。
ゆらゆらと、ふわふわと自由に浮く雲。
「何が言いたいんですか」
いつの間にか上に昇ってきていた綱吉が浮雲を隠す。視界に大きく入り込む、イタリア最強マフィアのボス。
だが、マフィアという割りにはあまりにも優しく、弱弱しい表情に思わず口元が歪む。
「別に」
くすくす笑いを零しながら、イタリア最強のボスの手を引き寄せる。
その力に逆らうことなく、自分の元に来る彼の弱々しい肩を抱きしめる。痛いくらいに。
「ただ、僕を信じさせてみてって言ってるだけ。別に赤ん坊でも、六道骸じゃなくてもいいよ。ただ、僕のこのイライラを発散させる場所を作って見せてって言ってるんだ」
彼の耳元でぼそり、と呟く。
「そうすれば君を信仰してあげても構わないよ」
雲雀の胸元に倒れこんだまま綱吉は動かない。
先ほどと同様に浮雲はふわふわと自由に動き続ける。
自由に、何者にとらわれることもなくただ自由に。
          -fin-
いや、ただ信仰って言葉を使ってみたかっただけ。なんか屋上でそういう会話をしてても萌えるなぁと思いまして。
抱きしめてはいますけど+です。雲雀さんは色々無意識にやらかしてるイメージがあります。←

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