節分(リボツナ
昔々あるところに可愛らしい顔の子鬼と、心優しい男の子がいました。男の子の暮らす町では鬼に毎年豆を投げつける習慣がありました。
子鬼は毎年2月2日に豆を人間から投げつけられいつもこの時期には町に降りることはありませんでした。
ですがひょんなことから人間に見付かってしまいまた豆を投げつけられました。その時、ある子供が子鬼を匿ったのでした。
「子鬼さんを、いじめちゃヤダ!!」
あまりにも悲しそうな顔で、涙を浮かべて懇願する子供に町の大人たちはしぶしぶ子鬼に豆を投げつけるのをやめました。
そして子鬼と子供は仲良くなりました。いつも町のはずれの木漏れ日のさす丘で二人は遊びました。
「大きくなったら僕と結婚しようね!」
子鬼は意を決して言いました。子供は嬉しそうに笑いました。
「うん!」
可愛らしい顔の子鬼は節分の日、投げつけられる豆から守ってくれた人間の子供に恋に落ちてしまったのでした。
よりにもよって、男の子に。

豆撒けっ!

「ツナー!豆の準備したかー?」
家の窓から顔を出して隣の家の青年に声をかける。
「あーうん、お面は用意したよ」
寝ぼけたような顔で頭を掻きながら隣人は窓から顔を出す。
「お面じゃなくて、豆は!?」痺れを切らしたのか少し怒ったような口調で青年に声をかける。
「豆?勿体無いから今日の夕飯の豆ご飯にイン」
呑気な顔でそう応える青年に隣人は呆れたようなため息をついてバタン、と窓を閉める。
「全く、隣の家の人は怒りっぽいったらありゃしない」
全く反省の意を見せない青年、ツナと呼ばれた彼は頭を掻きながら椅子に座る。
「そもそも節分なんて鬼をいじめる日でしかないじゃないか」
心の中にいる悪い鬼を退治する日、と教わった割には鬼贔屓なものだ。
「ふぁあ…」大きく欠伸をして、ツナは机の上に寝そべる。
その時、家の戸が開かれました。
「邪魔するぜ」
「はいはいお邪魔されました本日の沢田家は閉店でございますまたのお越しをお待ちしてまーす」
机の上に寝そべったままつらつらと喋り来訪者を追い払おうとする。
客に対する対応ではない。それは明らかだ。
「またのお越しはお待ちされねぇ」机の上に寝そべったままのツナの背後に立って来訪者は言う。
後ろに気配を感じたからか渋々顔をあげるツナ。
ツナの後ろにはやけに背の高い男が立っていて、ニヒルに笑う。
「よう、ツナ」見覚えのない顔に名前を呼ばれツナは首を傾げながら問いかける。
「どちらさん?見たことない顔だけど」
そうツナに聞かれ男は少し驚いたようにしてまた笑う。
「なんだ、忘れたのか」机から少し顔をあげた位置で頬杖をつくツナに顔を近づけツナの目をじっと見つめる。
じっと見つめられたツナは居心地が悪そうに体を離す。すると更に顔を近づけてくる男。
状況を完結に言えばまぁ迫られているような体勢。これが女性だったりすれば嬉しいフラグが立っている状態なんだろう。
でも生憎男同士だ。ときめいたりドキドキしたりなんて展開はない。いや、でもよく見ればイケメンなんで多少ドキッとはするが。
というかそれよりも。「なんだ、この状態」
暫く同じ体勢でフリーズしてたがツナがそう呟くことでその時間は終わる。
「お前が俺を忘れるのが悪い」
憎たらしい顔したイケメン君はそういって顔を離す。あらまぁ遠くから見てもイケメンね。そのパーツの一つや二つが俺にもあればモテモテになれたんだろうな。
いや逆に俺に中途半端にそろってると気持ち悪いか。
「言っとくけど、多分人違いだと思いますよ。俺、貴方みたいな嘘みたいなイケメンの友人いません」
真剣に言う、俺。別に周りがみんなイケメンじゃないとかそういうわけではないんだ。獄寺とか山本とか雲雀とか六道とかイケメンはいっぱいいるんだ。
でもそれともまた違う顔つきの嘘みたいなイケメンは周りにはいない。イケメンすぎて怖いわ。整いすぎて逆に恐怖も覚えるよ。
「いや、俺が探してたのはお前であってる。顔が全く変わってねぇ」
「変化がなくて悪かったな。つか誰だよ。なんでお前は俺のこと知ってるのに俺は知らねぇんだよ」
いい加減イライラしてきて頭をかき乱しながらそういえば呆れたような顔で見下ろしてくる。まーまー呆れた顔もかっこいいこと。
こりゃいつもモテモテだろうねぇ。女の子に困らないだろうな。
「ヒントだ。10年前、俺とお前は出会ってる」
「10年前のことを覚えていれたら俺はきっと今以上の裕福な生活を送れていただろうに」
忘れやすい俺はなんでもかんでも忘れてしまっていつも苦労してたんだ。例えば彼女の誕生日を忘れてしまったり仕事のことを忘れてしまったり。
そのせいで失ったものもきっと多い。いや多分このせいが主だ。
「お前は忘れてても俺は覚えてる。いいからとっとと思い出せ」
「いやそんな横暴なこと言われましても」
頭をばりばりかいて応対する。今日俺頭かきすぎな気がする。昨日風呂入ったんだけどなぁ。
「お前はさっきから何を考えてるんだ」
「お?」
「さっきから関係ねぇことばっか考えてんじゃねぇぞ」
なんだこいつ、頭の中読めるのか。うわ、怖。俺うっかり変なこと考えてたらどうしてくれるんだよバカヤロー。
「読めるんじゃねぇ、聞こえてくるんだ」
余計性質悪いわ!「ってお前頭の中の台詞を拾って会話にすんなよ」うっかり成立しちまってんじゃねぇか。
「てめぇは10年前、鬼に豆を投げるのをとめたことがあるだろう?」
首をぐねーと傾けて考え込む俺。あぁ、そういえばちっちゃいころにそんなのがあったような無かったような…。
「庇われた俺が言ってんだからあったに決まってんだろ」
あぁそうかそうだよな。投げつけられてた本人が言うんだから…「って投げつけられてたのお前!?」
びっくりして顔をじっと見てみればふん、と鼻を鳴らす。
「これを見てもまだわかんねぇか?」とか言いながら帽子を取る彼。あらまぁびっくり角生えてるんじゃないの全くもう。
「あらまぁ立派な角」
「そうじゃねぇだろ」いつの間にか近くに来ていて頭をこつんと叩かれる。痛いなぁ全くもう。
「お前が10年前庇ったとき、約束したじゃねぇか。俺の嫁に来るって」
………あーそんな約束したっけ?
「お前は直ぐに約束をなかったことにしようとしてんな。俺が折角迎えに来てやったんだ。おとなしく嫁に来い」
「あー、一つ確認したいんだけど君男でしょ?」
「あぁ。これで女に見えるか?」
自分の胸の辺りを触って俺に聞く。うん、まぁこんな女子いたら付き合いたくないわ。あまりにも男性フェロモン出すぎだろ。
「いや、それで女だったら本当に引くわ」
「いいからとりあえず一緒に来い」
「待て待て待て、論点が摩り替わってんぞお前。俺も男だ。お前も男だ。男同士で結婚とか俺絶対したくないわ」
「なんだ、約束破るつもりか?いい度胸だなお前」
うわー怖いよ怖いよ目がマジだよこの人。
10年前の自分バカだわ。なんでそんな約束したんだよ。
「まぁその辺は追々話し合うとして、とりあえず来い。こちとら10年間お前に会えなくてイライラしてたんだ」
「うわー、何その勝手な怒りー…」
そういって俺は住み慣れた家から所謂お姫様抱っこで連れ去られたのでした。
「まぁ、これからラブラブしようじゃないか。ツナ」
「お前の笑顔、超怖い。今まで出会った人の中で一番下心のある笑顔だわ。ホラー物だわ」
「いやぁそんなことはないぞ☆」
「悪意しか感じられない!!」
       -fin-
節分のリボーン鬼×人間ツナ。ちょいとしたパロ。超楽しかったけどオチが迷子になりました(笑)



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あきゅろす。
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