選びなさい(ひばくろ
---そうだ、こういうのはどうだろう。
そういって、雲雀はいつも握り締めているトンファーを下ろした。
クロームはぽかんとしたまま、その大きい瞳を雲雀へ向けた。

取捨択一

雲雀は、いつも以上に優しく微笑みながらクロームを見つめる。
一方の見つめられたクロームはおびえるように後ずさり、息を呑む。
「クローム、あの憎たらしい男を捨ててくれないかい?」
疑問系のはずなのに、返事を聞いてないような口ぶりで雲雀は言う。
クロームはただ、ふるふると首を振る。泣きそうに、俯きながら。
すると、雲雀の目が一転細く切れ長く閉ざされる。
「君があの憎たらしい男を捨ててくれるのなら、僕は世界を捨てるけど。それでも駄目だっていうの」
少し首を傾げて、クロームを睨む。
そして、手を伸ばす。
「おいで。悪いようにはしないよ?」
怪しく笑って、クロームを見る。相変わらず無口なまま、地面に座り込むクローム。
その手を無理やり掴み、立たせて自分の腕の中に納める。
とても小さな悲鳴が聞こえたが、それも直ぐに聞こえなくなる。
小さいクロームはあっさりと雲雀の腕の中に納まり、クロームが少し離れようとするが、体格的にも力的にもそれは叶わない。
雲雀はもがくクロームを抱きしめたまま、呟く。
「僕は君以外全部を捨てるから、君はあの男を捨てて」
クロームにそれが聞こえたかは定かではないが、もがくのをぴたりとやめる。
それを感じて、雲雀はもう一度ぎゅっと抱きしめる。
そして、口を開く。
「クローム。もう一度聞くよ。あの、憎たらしい男を捨ててくれないかい?」
クロームは何か悩むように頭を俯かせて、消えそうな声で言う。
その答えは、風に紛れて消えた。
            -fin-
「…貴方と生きるわ」
「ワオ、それは光栄だね。クローム」



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あきゅろす。
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