犠牲(獄ツナ
彼はあまりにも優しい笑顔を浮かべて血だらけの手を伸ばし俺に微笑むんだ。

柔和

元を辿れば俺のミスだったと思う。
勝手に暴走して勝手に迷惑かけて、勝手に戦っただけなのに。
彼はあまりにも自然に俺の視界に入ってきた。

「ご…くでら…くん…?」
スローモーションに、動く彼。
敵に背中を取られ、撃たれる一歩手前。
彼はあまりにも自然に視界の端に入り込み、いとも簡単に俺の犠牲になった。
地に倒れこむ彼。地を蹴り渾身の力で蹴り倒す俺。
「獄寺ッ!!」
倒れこんで満足そうに笑う彼を一度見、直ぐに駆け寄りたい衝動を抑える。
まずは、奴らだ。奴らを片付けなければ。

しん、と静まった空間。荒い息がただ響く。
「ご、獄寺君大丈夫…!?」
駆け寄って、傷口の処置を始める綱吉。
一方の獄寺は幸せそうに笑う。
「10代目が…ご無事で、何よりです」
「なんでこんな時にまで俺の心配なんてするのさ!」
泣きそうになりながら治療を進める綱吉。
いつでもどんな状態でも綱吉中心な獄寺を少し叱れば獄寺が目を瞬かせる。
「え…」
素っ頓狂な声を出す獄寺。
「なんで突っ込んでくるの!?なんで俺なんかのために体張るの!?もう…馬鹿じゃないの!?」
いよいよ堪えきれなくなって、涙を零す綱吉。
すると、急に真剣な顔をして言い放つ獄寺。
「馬鹿は10代目です。何も言わずにいなくならないで下さい。俺の側にいてください」
真剣な顔から一転手を伸ばし俺の頬に触れ、にへらと笑う獄寺。
「大体、わかってくださいよ10代目。好きじゃなかったらこんなことしませんよ」
それを聞いた途端、綱吉がぽかんとする。そして、心底おかしそうに笑う。
「はは、獄寺君も俺も、十分馬鹿みたいだね」
          -fin-
「獄寺君、おかげで助かったよ。ありがとう。でもこれからはあんまり無茶しないでね」
「はい。10代目。では10代目にもひとついいですか?」
「ん、何?」
「俺にちゃんと相談してくださいね。俺のこと、頼ってくださいね」
「う……うん」
「あ、それともうひとつ。10代目、来週デートに行きません?」
「………はいっ?」


ちょっと積極的な獄寺君が好きです。かっこいいよね。



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あきゅろす。
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