空に舞うのはこの想い:djmn Y.Isd夢
快晴の空を舞う蝶が煌く。
風が身体を吹き抜ける。
今すぐ君に会いたい。
「……え。」
「仕方無いでしょ!!私だってワザとじゃないの!!」
ふるふると肩を震わせ紅潮した頬に涙目でヤマトに訴えてみるも呆れているのは一目瞭然。
普段のタートルネックにバルーンワンピースとは違い、今日はハートのチュニックにデニムのフレアスカートといういでたち。
靴だってブーツではなく足首にピンクのファーをあしらったパンプス。
編み飾りが可愛い黒いニーソックスが良く合っている…と思う。
だが額を押さえて、いかにもやれやれといった感じでと溜息をつかれてはそんな努力も無駄だったのでは…と不安になる。
「……取り敢えずもう一回言ってくれ。」
「だから!!」
ぐっと言葉を詰まらせ更に頬を紅潮させる。
あまり何度も言いたくはなかった。
「今日デートできるだけのお金が無いの!!」
「はあぁ…………。」
きちんと小遣いをやりくりしていたのだが、なぜか財布の中身はすっからかんになっていた。
前日に購入したお気に入りの作家の新作が大打撃だったのだ。
自分は勿論だが、ヤマトとてどう足掻いてもまだ小学生。
親から金を貰わなくてはろくに遊べもしない身分なので当然奢って貰う訳にはいかない。
「折角のデートなのに…。」
思わず俯いてしまった。
自分の不甲斐無さに涙が出そうだ。
ヤマトもきっと困ってしまっているだろう。
嫌われたかもしれない……。
「よし。」
「ヤマト?」
「取り敢えず行くぞ。」
急に手をぱっと握られ、離されないようになのかぐいくいと引かれる。
後ろからほんの少し見える耳が赤いのは気のせいではないだろう。
「ねぇねぇどこ行くの?」
「いいからついて来い。」
ずるずると引き摺られて行く。
向かった先は……。
「何これ。」
「移動動物園。勿論タダ。」
山羊やら兎やらポニーやら果ては虎やらジャガーまで居てちょっとしたサーカスである。
というか正直虎やジャガーを放し飼いにして良いものなのだろうか。
いや鎖ついてるけどさ。
犬じゃないんだからさ。
兎と虎とか食べられちゃったりしないんだろうか。
そんな事に思い馳せているとヤマトが覗き込んでいた。
いつもよりぐっと近い顔に思わず声を上げた。
「ふわわわわっ!!」
「……嫌だった?」
「ほえ?」
見るといつも自信に満ちているヤマトの表情が暗い。
「やっぱりもう動物園って年じゃないよな。ごめん。」
「そんなこと無いよ!!凄く楽しい!!」
どうやら誤解されてしまったようだ。
ヤマトが連れて来てくれたのに嬉しくない訳が無い。
にっこり笑いながらそう伝えると一瞬驚いたように眼を見開いてふいっとそっぽを向いてしまった。
「ヤマト?」
「 」
「?」
ヤマトが何かを呟いた。しかし風がその声を掻き消してしまう。
聞き直そうとヤマトの正面に回った瞬間。
突然視界が塞がれる。
ただし一瞬だけ。
残ったのは唇に残る確かな体温と彼の言葉。
「陽音々の馬鹿。無防備過ぎんだよ。抑えらん無いだろ。」
無限大な色彩で夢を彩ってくれるのは愛しい人。
夢から覚めても彼が居れば白黒(モノクロ)の世界も美しい。
彼への愛しさは何にも負けず。
負けそうなのは私の鼓動。
Fin.
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