打倒・傾奇漢!












いつかデッカくなってやる!


ずっと、そう反骨精神で生きていた。
嫌いだった牛乳や魚だって毎日食べてきた。童顔なのも何とかしようと眉はいじっていないし、体だって鍛えている。
イメージトレーニングも大事だ。いつかぴったりになってやるとサイズの大きい服も何着か用意してある。
目標は大きく、と180越えないと着れないようなヤツを。

…なのに、

「コレ、ちっと寸足らずだな。他にないのかい?」

「お前なんか大っ嫌いだ!!」

「なんだいなんだい、いきなり」

ぎっと涙目で睨み上げて怒鳴ったけど、男のくせに長いポニーテールのデカブツはきょとんと俺を見返しただけだった。
そんな髪が長いのに男臭さしかないコト自体腹立たしい。俺が同じ髪型だったら性別間違えられるのに。

「俺のっ、俺の神聖な服を貸してやったのに文句言うなぁ!」

渾身の力で殴りつけているのに胸板が分厚くて、ポカポカと情けない効果音しかしない。
眉が下がっているのだって俺の癇癪に困ってるだけで、ダメージ0だ。その涼しいカオが俺が怒る原因だと解っていない。

「悪かったって。そんな怒るなよ、花葉」

「下の名前で呼ぶなぁ!!」

字も音も男らしくない自分の名前がコンプレックスなのに、止めろと言っても名前で呼んでくる。

「ホント怒りっぽいねぇ。こないだテレビでそういうのには『かるしうむ』がいいって言ってたぞ?」

「十分過ぎるぐらい摂ってるよ!毎日っ、お前の目の前でっ!!」

「ああ、あの白くて腹下しそうなのか?俺はあんま好きじゃないな」

「やっぱ慶次なんか嫌いだ!!」

「俺は別にそうでもないぞ」

あっけらかんと笑う大男。まるで体格の大きさがそのまま器の大きさだと言ってるみたいだ。
本当に悔しい。

「今に見てろ!大器晩成でお前よりデカくなってやるんだからな!?男は22まで伸びるんだ!」

そう、まだ望みはある。
指を差して逃げ台詞のように言うと、大きな掌が頭の上にのった。

「ま、楽しみにしとくさ。でも、身長で男の価値が決まるでもないだろ。好きな娘がそう言ったのかい?」

「っ!?か、関係ないっ///;」

「いいねぇ、そのカオ。恋してるって感じだ」

「ううう煩い!いい加減、頭撫でるの止めろっ!」

手を払って跳躍して回し蹴りを決めるが、簡単に腕で防がれてしまう。

「ははっ、猿みたいだな。花葉」

「猿のせてるヤツに言われたくないっ」

どうやら俺が鍛えて手に入れたのは身軽さらしい。


俺が怒っては慶次が余計に笑って。
何もかも正反対の俺たち。
合わないのに、何だかんだで結局一緒に暮らせているから不思議だ。

本当に同居人ができて困ってるコトは、部屋が途端に狭苦しくなったコト。



邪魔だけど、目下の目標なのも確かだから。
とりあえずは、明日からは牛乳にプラスプロテインだ。












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