「梨園、梨園っ、今夜コレ観ようぜv」 面白そうだ、と喜色満面に元親がテレビ欄を開いて見せる。 夕食を終え、食器を片付けていた梨園はまるで一時停止したかのようにしばし動きを止めた。 タイトルからして恋愛モノ。 梨園はアクション派だった。 「……別に、いいけど」 同時刻にやるカーアクション物に惹かれながらも、どちらでもいいかと梨園は頷いた。 食器を洗って、宿題を済ませて、それから一緒に観る。 元親は割とテレビのドラマや小説など物語が好きらしく、面白ければ梨園の持ってる少女漫画なども読んだ。受け口は広いが趣味は良かった、元親が気に入ったモノは大概梨園が特に面白いと思ったモノだった。 だから、元親が興味を持った恋愛映画も構成がよく出来ていて意外性やコメディテイストも含んでおり、かつ心に響く感動のクライマックス。 最後は恋人同士が死を共にする、哀しいハッピーエンド。 感動を感じつつ梨園が隣に目をやると、 「…………」 滂沱する男が一人。 しばらくその様子を眺めてから梨園はティッシュ箱を差し出した。 「はい」 「…あ、悪ぃな…っ///」 平然としている少女の視線に気付いて、元親は気恥ずかしげに涙を拭った。 「良かったな…」 「うん、面白かった」 映画もそうだが、隣で表情豊かに変わる素直な男が。 「…ちょっと羨ましいな」 「あ? 何がだ」 ぐずつきを残した声で元親が訊いた。 「私、一回も泣いたコトないから…」 いい話に心動かされるが、それが表情に出るかは別の話らしい。 「梨園…」 「「でも、」」 これからは 「チカ兄が私の」「俺が梨園の」「「分も泣くから」」 重なった言葉に、互いに顔を見合わせる。 「よろしくお願いします」 小さく頭を下げてみせる梨園に、可笑しげに微笑する元親。 「おぅ、任せとけ」 「カッコつけれるコトじゃないけどね」 「お前が言うなっての」 「そだね」 そうして笑い合う。 自然、増えた笑顔。 涙は分けて、 笑顔は2倍にして それが一人より二人の効果。 |