長男的大岡裁き













「………」

しかめっ面で黙殺する日向。

「「「「…………;;」」」」

その前に日向の妹とそのオマケが並んで、一様に青ざめて正座させられている。
日向自身も座る場所があるのにフローリングに座している。
俺一人がソファーで頬杖ついて、それを傍観していた。
俺としては面白いからいいんだが、俺以外はそうじゃないみたいだ。
妹たちは思った通りcuteだった。やっぱ日向の妹だ。
左から上の妹のオマケ、真田幸村。一番冷や汗を垂れ流して固まってるから、一番笑える。隣の妹は威勢が良さそうな目を気まずげに兄から逸らしていた。
その隣に下の妹。すっかり蒼白になってビクビクと怯えている、兄に怒られるコトなんてなかったんだろう。さすがに気の毒に見える。忍もそう思っているんだろう、横で僅かに苦笑をのせて視線を送っていた。一番余裕があるのはコイツだな。

「……一体どういうコトだ?」

低く問う日向。真面目くさった渋面も面白いな、と思う。
妹たちは余計に口をつぐんで押し黙る。

「二人揃ってどこのどいつとも知れない男を連れ込んで…」

『連れ込んで』と言うphraseを自分で使っておいてshock受けてる辺り、やっぱ日向は可笑しい。
まぁ、この妹たちが野郎連れ込むなんて信じられないだろうな。
俺は可笑しさにこっそり喉を鳴らす。

「親父たちに何て言えばいいんだ…?;まさか明日羽まで…」

確かに上の妹は男友達とかいそうだが、下の妹は一人もいないようなpureな感じだ。今だって顔を赤くして恐縮している。

「〜〜っ///;」

「あの、お兄さん?あんま責めないでやって。これには事情が色々あって…」

「家族の問題に口出ししないでくれ」

「ハイ…;」

見かねて口を開いた忍を一睨みで一蹴する日向。兄の威厳様様と言ったところか。

「あっ、兄上殿っ;某らは決して疚しいコトなど…!」

「当然だ。あってもらっちゃ困る」

日向はきっぱり言い切り、真田が犬耳を垂れシッポを丸めた。

(おぉ、すげ。あの真田主従を黙らせやがった)

オマケはともかく妹たちが弱りきっているから、そろそろ助け舟出してやるか、と腰を上げる。

「Hey.日向」

後ろから首に巻き付くと不機嫌に払おうとされる。

「邪魔すんな、政宗。これは俺たち兄妹の…」

「コイツら、俺と同じだぜ」

「…は?」

変なカオになった日向は俺の手を退けるのを忘れ、俺は存分に抱き着く。

「顔見知りだぜ。なぁ?」

俺が促すとコクコクと頷いて真田が申し出た。

「某、武田軍武将・真田幸村と申す」

「同じく真田忍隊の長・猿飛佐助デス。つまりは旦那の部下」

一瞬、日向が完全に体を支える力を失った。頭が真っ白になったみたいだ。
正気に戻るとどんよりと床に手をついて項垂れた。

「よりにもよって…っ;;」

こんなコト何度もあるワケがないのに、この確率。非常識に打ちのめされている姿が面白い。

「何で俺に一言相談してくれなかったんだ…?」

「…お兄、黙っててゴメン。信じてもらえないと思って」

「私も、ごめんなさい…」

しゅんとして謝る妹たちに日向は呆れたように嘆息する。

「俺がお前たちの言うコト信じないワケないだろ。余計な気を回すんじゃない」

「お兄…」

「お兄ちゃん…」

「そうだよなぁ?お前のトコにも俺が来たんだし」

「政宗!茶々入れんじゃねぇよ!」

のしかかって肩に顎を載せると、いい加減振り払われた。

「しかし、このまま妹たちの部屋に野郎置いとくワケにもなぁ…」

腕を組んで悩む日向は、ふと思い至ったようすで顔を上げ、

「仕方ないから、俺の部屋に……………;;;」

床に突っ伏した。
どうやらその図を想像してしまったらしい。床に雑魚寝すれば寝れないコトはないが、むさ苦しいことこの上ない。
第一、俺が嫌だ。男のすし詰めなんて冗談じゃない。
しかし、ここで『追い出す』という選択肢が出ない辺り、日向らしい。相手は大事な妹の部屋にいた男なんだし、真田はともかく忍に至っては生活能力に心配はないだろうに。

「いいじゃねぇか、日向。コイツらの安全性なら俺が保証するぜ?」

なにせ、忠犬とオカンだ。

「お前の保証ほど信用できないモノはない…」

「あっ兄上殿!」

「ん?」

げんなりした様子の日向は声をかけられ真田の方に向いた。

「真白殿は行く宛のない某を置いて下さった大恩人でござるっ、ですから、不貞を働くなど言語道断!迷惑はかけぬ故、何卒…っ!」

「俺様も明日羽ちゃんには感謝してるけど、お兄さんに言われたらいつでも出ていきますよ」

「ハァ…、わかった」

居ていい、と日向は仕方なさそうに許した。

「行く宛もないんだろ」

「っ!感謝致します、兄上殿っ!!」

「どうもありがとうございます」

「真白、明日羽も、それでいいか?」

「うん。ありがと、お兄」

「お兄ちゃんがそう言うなら…」

安堵する4人に日向は付け加えておく。

「ただし、何かあったら俺のトコに来い。どうしてもダメな時は俺が預かるし、今度二人に俺の合鍵作って渡すから好きな時に訪ねて来い。真白に明日羽も何でも言いに来いよ?」

「「うん」」

「「はい」」

その言葉に全員が感謝を込めて頷いた。
そのめでたしめでたしが俺は納得行かない。

「おい、日向」

「重い、のるな!何だよ」

「俺が言った時には信用しねぇっつったのに、何で真田たちの言ったコトには頷いた」

「幸村たちにはお前にはない誠意があったからだ」

決まってるだろ、と断言してのける日向。
今大事な妹がいる目の前で、その憎らしい口塞いでやろうか、と殺意が湧いた。











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