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†短編小説
Lonely Vampire
「吸血鬼」それは、恐怖の存在・・・。



Lonely Vampire ‐独りぼっちの吸血鬼‐




銀杏の木の下、一人の少年が立っていた。


時は神無月。銀杏の葉は、とっくに黄色に色付いていた。



少年の名は、イア。
黒き長い髪に、赤と白と黒のスーツ。
その格好は、吸血鬼の証だった。



イアは村の人々に嫌われていた。
イアは今まで人を殺したことなど無かったし、人を傷付けたことすら無かった。

ただ、たまたま吸血鬼に生まれただけで・・・嫌われた。





遠くに、仲が良い親子が見えた。
嬉しそうに笑っている。
イアにも家族はいた。
だが、みんな人間によって殺されたのである。
吸血鬼狩りと称されて。
イアは、たった一人生き残ったのだった。





イアは、ふと空を見上げた。
銀杏の葉が、風に乗ってヒラヒラと飛んでいった。




「おい!吸血鬼!」
村人の声がした。
イアは静かに村人の方を向いた。
村人は、鉈や鎌を持っていた。
人数は50人前後。
イアを殺しに来たのだ。


「今日こそお前を殺してやる!」
誰かがそう言い、周りの人達も「そうだ、そうだ!」とはやしたてた。



イアは、目をふせた。
そして、いきなり自分の手首を噛んだ。
一瞬の間もなく、イアは倒れた。
村人は、不審に思いつつも、近付いた。






イアは死んでいた。







吸血鬼は、自分の血を吸うと死ぬ。
イアは母から、その事を聞いていた。

イアは、憎かった。
もう生きていたくなかった。
でも、村人に恐れられて死にたくなかった。




村人は、その想いに気付いたか否かは分からない。
だが、数日後に銀杏の木の下に、小さな小さな墓があるのは事実だった。





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