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天使の羽跡


「ごめん!」

 僕は勢いよく頭を下げた。

「雪の問題なのに強引に話を進めてしまって…本当にごめん。」

 自分の靴の先を見つめること、数秒。
 何の反応もない雪に不安になり、恐る恐る顔を上げると、きょとんとした雪がそこにいた。

「なんで謝るの?…私、彼の家まで行ってみるって決めた。」
「え…。」

 相当の阿呆面をしていたのだろう。
 さっきはあんなに乗り気だったくせに、と雪は僕を笑った。

「でも、雪…。」

 僕は内心、少し焦っていた。
 無理に合わせているのではないか。彼に会うことで、傷つきはしないだろうか。僕が余計な事を提案したばかりに、雪が悲しむ結果になったら…。

 悶々と悩んでいるうちに雪の表情は、お得意のクスクス笑いから柔らかい微笑みにかわっていた。

「聡のおかげで、決心できたんだよ。今までだって、行こうと思えば行けたのに。そうしなかったのは、勇気がなかったから。聡が、私に勇気をくれたの。」

 ああ、そうだよな。雪はずっと、彼に会いたかったんだ。僕はただのきっかけに過ぎない。ずっと、好きだったのだから。
 心の中で自分を自嘲する僕に向かって、でも、と雪は続ける。

「やっぱり少し怖いから、一緒に行って欲しいな…なんて。」

 狙わずしての上目づかいが、僕を攻め立てる。
 可愛い、と思ってしまった。報われない想いなのに。これから、ずっと想い続けた男に会いに行くというのに。

 今年は恋愛しないと思っていたはずが、僕はあまりにも単純だった。
 雪が喜ぶ結果になったとしても、僕はきっと心から祝福することはできない。

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あきゅろす。
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