impatient
2
「ごちそうさま。美味かったよ。」
食事を終えると陽高様は、そう言って私を抱き寄せ、リップ音を立ててこめかみにキスをした。
私は必然的にベッドに乗る形になって、一昨日ぶりの陽高様の温もりにドキドキしてしまう。
無意識に逃げ道を探してさ迷う目線は、水とタオルが入った桶を捕らえた。
「氷、取ってきますね。」
「いい。」
離れようと体を動かすと、余計にきつく体を抱きしめられる。
「誰かに持って来させればいいだろう。紗奈は、ここにいてくれ。」
最後の一言に、ドキンと胸がときめいた。
今日の陽高様はいつもより甘えん坊な気がする。やっぱり病気の時は気が弱くなるものなのかな。
けれど陽高様は、少し口ごもり、私を引き止めていた腕を放した。
「いや…悪い。今更だが、しばらくは部屋に入らないでくれ。紗奈に風邪を移すわけにいかない。」
私の事を考えてくれるのは嬉しいけど、同時に少し寂しい。
そんな事気にしなくていいのに。私はもっと陽高様と一緒にいたいのに。
想いを伝えたくて、ぎゅっと陽高様の首元にしがみついた。
「本当、今更過ぎます。」
「紗奈…。」
「ここに、いさせて下さい。」
背中に回った陽高様の腕や、首筋に埋められた顔。全部好き。
ワンピースの背中のファスナーを下げて、そこから潜り直接肌に触れる指先も、言えないけど本当は大好き。
「…ん、陽高様……だめです。休まないと。」
「これくらい予想していただろう?最後まではしない。紗奈の肌に触れていたいんだ。」
「…あっ……んん…っ…」
陽高様の指摘は的確だった。
意地悪で言ったのではなく、本当に私の頭の中を見破られている。
私はどこかで期待していたのだ。
もどかしい刺激を受け、思わず陽高様の肩を掴んだ。
「紗奈、どうした?息が震えているぞ。」
「…そ、んな…っ」
「言い訳があるなら聞くが。」
言い訳さえも思い付かない。
背中をゆっくりなぞり続ける指だけが、私の奥に眠る感情を引き出す。
「何も言うことはないのか?」
「…っ、焦らさないで…ください…」
恥ずかしがりながらそう言った私を、陽高様はクスッと笑った。
「指だけでイかせてやる。」
陽高様の手はスカートの中に忍び込み、辿り着いた脚の付け根から、下着を横にずらし、くちゅりと水音を立てた。
「聞こえるか?相変わらず濡れやすいな。」
「……!」
誰と比べて?
何気ない一言。
けれど、恥ずかしいという感情よりも不快感の方が強く、一気に醒めた私は、陽高様の腕を押し返した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!