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impatient


「ごちそうさま。美味かったよ。」


食事を終えると陽高様は、そう言って私を抱き寄せ、リップ音を立ててこめかみにキスをした。

私は必然的にベッドに乗る形になって、一昨日ぶりの陽高様の温もりにドキドキしてしまう。

無意識に逃げ道を探してさ迷う目線は、水とタオルが入った桶を捕らえた。


「氷、取ってきますね。」

「いい。」


離れようと体を動かすと、余計にきつく体を抱きしめられる。


「誰かに持って来させればいいだろう。紗奈は、ここにいてくれ。」


最後の一言に、ドキンと胸がときめいた。

今日の陽高様はいつもより甘えん坊な気がする。やっぱり病気の時は気が弱くなるものなのかな。


けれど陽高様は、少し口ごもり、私を引き止めていた腕を放した。


「いや…悪い。今更だが、しばらくは部屋に入らないでくれ。紗奈に風邪を移すわけにいかない。」


私の事を考えてくれるのは嬉しいけど、同時に少し寂しい。

そんな事気にしなくていいのに。私はもっと陽高様と一緒にいたいのに。


想いを伝えたくて、ぎゅっと陽高様の首元にしがみついた。


「本当、今更過ぎます。」

「紗奈…。」

「ここに、いさせて下さい。」


背中に回った陽高様の腕や、首筋に埋められた顔。全部好き。

ワンピースの背中のファスナーを下げて、そこから潜り直接肌に触れる指先も、言えないけど本当は大好き。


「…ん、陽高様……だめです。休まないと。」

「これくらい予想していただろう?最後まではしない。紗奈の肌に触れていたいんだ。」

「…あっ……んん…っ…」


陽高様の指摘は的確だった。

意地悪で言ったのではなく、本当に私の頭の中を見破られている。

私はどこかで期待していたのだ。



もどかしい刺激を受け、思わず陽高様の肩を掴んだ。


「紗奈、どうした?息が震えているぞ。」

「…そ、んな…っ」

「言い訳があるなら聞くが。」



言い訳さえも思い付かない。

背中をゆっくりなぞり続ける指だけが、私の奥に眠る感情を引き出す。


「何も言うことはないのか?」

「…っ、焦らさないで…ください…」


恥ずかしがりながらそう言った私を、陽高様はクスッと笑った。


「指だけでイかせてやる。」


陽高様の手はスカートの中に忍び込み、辿り着いた脚の付け根から、下着を横にずらし、くちゅりと水音を立てた。


「聞こえるか?相変わらず濡れやすいな。」

「……!」


誰と比べて?


何気ない一言。

けれど、恥ずかしいという感情よりも不快感の方が強く、一気に醒めた私は、陽高様の腕を押し返した。

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あきゅろす。
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