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impatient


「失礼します…。」


定められた仕事が終わった紗奈は、言われた通り陽高の部屋へ行き、ノックの返事を聞いた後、恐る恐る扉を開けた。


「とりあえず、ここに座れ。」

「はい…。」


ソファーに座って書類に目を通していた陽高は、自分の左隣を示したので、紗奈は少し間を空けてちょこんと腰掛けた。


「勝手に悪いとは思ったが、紗奈の事を少し調べさせてもらった。」

「…え?」


座るなり告げられ、何の事だか理解できない紗奈は、頭の中に疑問符を飛ばしながら聞き返した。


「私のことって…」

「紗奈の過去の環境。特に家庭事情。」


――!!――


「そ、それで…何…ですか…?」

「幼い頃から女手一つで育てられ、中学時代、母親は再婚したがすぐに離婚。その後学校を休みがちになるが同級生の恋人が出来たことをきっかけに登校するようになる。中学を卒業すると恋人とは疎遠になるが、何事もなく高校生活を送り、高校卒業と同時に家を出て、現在は住み込みでアルバイトをしている。…間違いはないな?」

「……はい。」

「他にも部活動の記録や学業成績まである。何故一日でここまで調べられたかというと…中学及び高校時代の紗奈を、先に調べていた人物がいた事が判明したからだ。。」


紗奈はたちまち顔色を悪くし、震える唇から声を搾り出した。


「まさか…。」

「紗奈が中学生の時に母親が再婚した相手。お前の元義父だ。」


――そんなことまでしていたの…?ようやく解放されたと思って、でも毎日不安だったあの頃…知らないうちに監視されてたなんて…!――


陽高は、顔面蒼白で俯いてしまった紗奈を見て、考えつつも信じてはいなかった可能性に確信を持ちつつあった。


「紗奈…。」

「違うんです!私、何も…あの人には、……っ!」


今にも泣き出しそうに縋る瞳はとても痛々しく、陽高は、それ以上何も言えなくなった紗奈を、ただ抱き寄せる事しかできなかった。

しばらくして陽高からそっと離れた紗奈は、顔色が大分良くなっていた。


「あの…、そこに書いてあること全て忘れて下さい。前科があるわけでもないですし、私の昔の事なんか、仕事に差し支えありませんよね?」

「…確かに仕事には何ら差し支えないが、紗奈が自分の体を大切にしない事と関係があるのなら、見過ごす訳にはいかない。」


紗奈は顔を強張らせ、体さえも固まってしまった。

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あきゅろす。
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