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impatient
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紗奈の綺麗な瞳から、雫が零れて頬を伝う。

前触れのないそれに、俺は少し戸惑った。


「何故泣くんだ。」

「泣…いて、ませ…っ。」

「泣いているだろう。」


俯いて顔を隠す両手首を掴み、紗奈を覗き込むと、俺から逃げるように顔を背ける。


これは、すぐには素直にならないな。…仕方ない。


ちょうど良く眼前に現れた耳に舌を這わせると、紗奈は短く叫んで俺を振り向いた。

唇に軽くキスをして、紗奈の細い腰を抱き上げ、腕の中に閉じ込める。

すると紗奈は唇を尖らせて、鼻を啜りながら言葉を紡いだ。


「…私、やっぱりいつも、もらってばっかり…。」

「貰ってばかり?男が女に指輪を贈るのは普通だろう?」

「違うんです…。いつも、陽高様は色んなものをくれて、でも私何もあげられないから…。だから、私も陽高様に何かあげたかったけどダメで。す、するときも、陽高様いつも私を攻めていっぱいしてくれるから、たまには、私もと思ったのにやっぱりできなくて…。」

「紗奈、落ち着け。」


紗奈を囲む腕に力を込めて抱き寄せると、紗奈の肩に入っていた力が抜けていった。


「言いたい事は解った。だが、紗奈が貰ってばかりというのは間違っている。」

「え…?」


涙で潤ませた瞳で見つめてくる紗奈を、こんな時でもとても可愛いと思う俺は重症だろうか。いや、正常のはずだ。

そんな事を考えていると、俺は表情が綻んでいたらしく、紗奈は不思議そうに眉を寄せた。


「俺の方が、紗奈に貰ってばかりだ。」

「私、何もあげられてませんよ…?」

「沢山貰っている。言い表せない程。」

「え、あの…。」

「形あるものだけが全てではないだろう?」


頬を撫で至近距離で見つめると、紗奈は戸惑いつつも照れ笑いを見せた。


「わかったか?だから紗奈が気に病む事は何もない。」

「…でも、それなら私も陽高様にいっぱいもらってます。」

「平等でいいじゃないか。どちらかが多かったら成り立たないだろう?」


そうは言ったが、俺が紗奈に与えるより俺は紗奈に与えられていると実感する事は多々ある。

こんなにも満たされた気持ちになれるのは紗奈がいるからだ。

俺の感情は全て紗奈がくれたと言っても過言ではない。


「傍にいてくれてありがとう。」

「こちらこそ、一緒にいて下さってありがとうございます。」


いつも思っていながらも言っていなかった事を改めて言うと、紗奈も畏まってお辞儀をする。

下げた頭を戻しながら上目で俺を窺う紗奈と目が合い、俺達は小さく笑い合った。




---Fin
2009/06/15


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あきゅろす。
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