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impatient
10
自然と目を覚ませば、外は既に明るくなりつつあり、驚いて時計を見るけれどやっぱり混乱。

昨日いつ寝たの…?


「起きたか。おはよう。」

「おはようございます。あの…」


隣に密着していた陽高様に、にっこりと微笑まれ、額に軽く口付けられる。

段々はっきりしてきた頭で辺りを見回すと、ずっと私の体に絡み付いていたらしい陽高様の腕が静かに離れた。


「どうした?」

「いえ…。」


どうしたと問われると、別に何もないのだけど。

昨日は、えっと…。


「昨夜は絶頂し過ぎて気絶するように眠ったから、時間の感覚がないのかと思った。」

「え……っ。」

「…図星か。」

「……。」


そうだ。昨日は陽高様に沢山イかされて、…そこから記憶がない。


「悪かった。年甲斐もなくやり過ぎたな。怒ってるか?」

「怒ってはいませんけど…。」


私がしたかったのにな。

結局いつも、陽高様の思うままに、私がされてばかり。

私も陽高様に何かを返したいのに。


陽高様は、しょんぼりしていたのを機嫌が悪いと思ったようで、私の肩を抱き寄せ、宥めるように頭を撫でた。


「紗奈、俺が悪かった。機嫌を直せ。」


怒ってないって言ったのに。

手持ち無沙汰に指先をもぞもぞ動かしていると、昨日まではなかったはずの違和感を覚えた。


「え………?」


薬指に嵌められた宝石がキラリと輝く。


「あの、これ…っ」

「昨日渡そうと、前から考えていたんだ。」

「…昨日が何の日だか、覚えていたんですか?」

「当然だろう。」


会話を続けたいのに、呆気に取られた私は次の言葉が出ず、餌を求める鯉のように口をパクパクと動かしてしまった。


「じゃあ昨日は、気付いていないふり…だったんですか?」

「いや。まさかあんなに可愛い紗奈がプレゼントとは思っていなかった。」

「ごめんなさい…。」

「嬉しかったよ。紗奈は忘れているだろうと思っていたから。」


同じ事、思ってたんだ。


「これからもよろしく。」

「はい、こちらこそ…。」


私の手を取って指輪に口付ける陽高様。

その姿は誓いのようで、私は頬を染めてしまう。

嬉しい。愛しい。


…だけど…。

いつものお礼のつもりが、逆にもっと大きなプレゼントを貰ってしまった。


私、何もできないじゃない。

そう思うと鼻の奥がツンとする。

でも今泣いたら陽高様を困らせてしまう…。

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あきゅろす。
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