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impatient



「プレゼント?」


今日も休憩室で寛いでいる亜希さんに、私は真面目に相談を持ち掛けた。

というのも、もうすぐ私がここで働き始めてから…陽高様と出会ってから、一年。

陽高様は覚えていないだろうけれど、私にとっては人生が変わったと言っても過言ではない運命の日だ。

それに託けて、いつも与えられてばかりの私は、陽高様に何か与える側になりたいと考えた。


「紗奈ちゃんが選んだ物なら、なぁんでも喜ぶと思うけど?」

「それが、買いに行く機会がなくて…。」

「そうねぇ。じゃあ…やっぱり紗奈ちゃん自身じゃない?」

「………………え?」

「ラッピングは任せて!綺麗にリボンかけてあげるから。」

「えと…あの…。」

「大丈夫大丈夫。紗奈ちゃんなら絶対可愛いし、陽高様も絶対喜ぶから。よーし、気合い入ってきた!そうと決まれば、今からプレゼントの特訓ね!」

「あ………はい…。」


特訓って何するんですか?とは
聞けなかった。

ケーキを作る練習かな、などと安易な想像をしていたのだ。





当日。

私は、陽高様が仕事に行くのを見送った後、作業に取り掛かった。

如月さんの丁寧な指導を受けて練習した成果を発揮すべく、ひとつひとつ思い出しながらケーキ作りを開始した。


「紗奈ちゃん、どう?」

「いい感じ…だと思います。」


ひょこっと調理場に顔を出した亜希さん。


「もう焼けたんだ。それできたら、次は紗奈ちゃんのデコレーションね。」

「…はい、よろしくお願いします。」


あの日からの特訓は、ケーキ作りだけではなかった。

ケーキを焼いている時間を利用して、亜希さんに、男の人を喜ばせる方法を事細かく説明…むしろ力説された。

ただしそれは、私が陽高様にという限定で、亜希さんが実際にしたわけではないらしい。

しかし、買い出しに行っていた如月さんが帰ってくると、顔を真っ赤にして色々ごまかしていたのが、少し気になった。



「よし、おっけー。すっごい可愛いわよぉ、紗奈ちゃん。」

「…なんか、恥ずかしいです……。」

「うん、その恥じらいも可愛いから大丈夫。」

「はあ…。」

「私が教えた事ちゃんと覚えてる?」

「はい、覚えてます。」

「じゃあ頑張って!」

「はい!」


ガッツポーズをする亜希さんに誘われ、私も両手を握って気合いを入れた。

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あきゅろす。
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