impatient
6
「入ってもいい?」
帰り支度をしていた如月君は、突然の訪問者に驚いていた。
他の厨房の人達は、夕食の片付けの後、翌日の仕込み等をして、もう帰ってしまったことは知っている。
だから、私は人目を気にせず、行動に移ることができる。
「あのね、あの後考えてわかったの。陽高様のことは、恋じゃなくて憧れてただけだった。恋に恋してただけ。…しなきゃいけない時、浮かんだのは如月君の顔だったんだよ。」
「……。」
「如月君の前でだけ、女の子らしくいたいと思えるの。如月君にだけ、私の女の子の部分を知ってて欲しい。だから、あの仕事が来ても断る。もう来ないと思うけど…。」
「亜希さん…。」
「如月君が好き。だから、その…したかったらしてもいいんだよ?ただ、ここじゃちょっと…。」
「亜希さん、したいの?欲求不満?」
その台詞に顔を上げると、意地悪な表情の如月君と目が合った。
「人が真剣に告白してるのに!」
「ははは。ごめんって。じゃあ今度デートしよう。」
「うん!」
微笑みあった私達は、初めて気持ちの通じ合ったキスをした。
「亜希、最近乙女っぽくなったよねー。」
「うんうん、前まで言動がおばさんみたいだったのに。」
「恋でもしちゃった感じ?」
「ふふふー。秘密です!」
毎日楽しくて嬉しくて。
恋愛っていいな、なんて思えたりして。
やっぱり、如月君とだから…なぁんて一人で惚気ちゃう。
あれからくっついたらしい紗奈ちゃんと陽高様にも、本当に心から祝福できた。
そして約束の初デートの日。
「あ!」
「ん…っ、何?」
「辞表、取り消さなきゃ…。」
「はぁ!?ちょっと!本気で辞めるつもりだったの!?こんなことしてる場合じゃないじゃない!早く行きなさいよ!」
「でも、せっかく亜希さん…」
「いいから!こんなことこれから先いくらでもできるでしょ!ほら、早く服着て!」
「は、はい…。」
全くもう、しょうがないんだから。
ま、こんなとこも好きなんだけどね。
---Fin
2009/02/27
[*前へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!