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impatient



「入ってもいい?」


帰り支度をしていた如月君は、突然の訪問者に驚いていた。

他の厨房の人達は、夕食の片付けの後、翌日の仕込み等をして、もう帰ってしまったことは知っている。

だから、私は人目を気にせず、行動に移ることができる。



「あのね、あの後考えてわかったの。陽高様のことは、恋じゃなくて憧れてただけだった。恋に恋してただけ。…しなきゃいけない時、浮かんだのは如月君の顔だったんだよ。」

「……。」

「如月君の前でだけ、女の子らしくいたいと思えるの。如月君にだけ、私の女の子の部分を知ってて欲しい。だから、あの仕事が来ても断る。もう来ないと思うけど…。」

「亜希さん…。」

「如月君が好き。だから、その…したかったらしてもいいんだよ?ただ、ここじゃちょっと…。」

「亜希さん、したいの?欲求不満?」


その台詞に顔を上げると、意地悪な表情の如月君と目が合った。


「人が真剣に告白してるのに!」

「ははは。ごめんって。じゃあ今度デートしよう。」

「うん!」


微笑みあった私達は、初めて気持ちの通じ合ったキスをした。








「亜希、最近乙女っぽくなったよねー。」

「うんうん、前まで言動がおばさんみたいだったのに。」

「恋でもしちゃった感じ?」

「ふふふー。秘密です!」



毎日楽しくて嬉しくて。

恋愛っていいな、なんて思えたりして。

やっぱり、如月君とだから…なぁんて一人で惚気ちゃう。


あれからくっついたらしい紗奈ちゃんと陽高様にも、本当に心から祝福できた。




そして約束の初デートの日。


「あ!」

「ん…っ、何?」

「辞表、取り消さなきゃ…。」

「はぁ!?ちょっと!本気で辞めるつもりだったの!?こんなことしてる場合じゃないじゃない!早く行きなさいよ!」

「でも、せっかく亜希さん…」

「いいから!こんなことこれから先いくらでもできるでしょ!ほら、早く服着て!」

「は、はい…。」


全くもう、しょうがないんだから。

ま、こんなとこも好きなんだけどね。



---Fin
2009/02/27


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あきゅろす。
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