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impatient


「な、何で…」

「好きだから、してるの?」


知ってた…んだ……。


「仕事、だから。」


好きだった、けど如月君相手には何故かそれを言えなくて。

俯いて答えれば、如月君は私に一歩近付いて言った。


「仕事だから?亜希さんはお金で体を売るの?」

「……っ!」


違う、と断言したいのに、自分が言ってしまった事だから否定出来ない。


「じゃあ俺もお金払ったら亜希さんを抱いていいの?」

「な…っ」


ビックリして、バッと顔を上げると視界が陰って、それが如月君によるものだと気付いた時には、もう唇同士が離れた後だった。

呆然としていると、後ろにあったテーブルに押し倒された。


「き…さらぎくん…?」

「あ、そうだ。今まで勝手に食べてたデザート代、体で払って貰おうかな。」

「や…嫌!やめてよ、こんなの…っ」

「嫌?何で?じゃあデザート代帳消しにして、更にお金も払うよ。それならいいんでしょ?」


聞きながらも、私の許可なんか初めから求めていないというように、足を伝ってスカートの中に手が忍び込んでくる。


「ゃ、あっ!」

「亜希さん、どこが感じるの?ここ?」

「っ……やめて!!!」


如月君の手が下着に触れて、いよいよ危ない状況が押し迫った時、私は叫んで彼の体を強く離した。


「やっぱり…。」

「え…?」

「ごめん亜希さん、手荒なことして。俺、なるべく早くここ辞めさせて貰えるよう掛け合うから、安心して。」


そう言った如月君は悲しげな笑みを浮かべていて、私はさっきまでの恐怖も忘れて慌てて引き止めた。


「わ、私、大丈夫だから、気にしてないから…。誰にでも気の迷いってあるし…」


バンッ、とテーブルが激しい音を立て、私は肩をビクつかせた。

如月君は拳を作っていた手を、ゆっくりと開いた。


「…亜希さんは結局、陽高様だけが好きなんだよね。嘘つかないで本当のこと言ってくれればよかったのに。俺に変な期待させないで、俺に嫉妬させなければ、嫌な思いしないで済んだのに。」


期待…?嫉妬…?


「抱きしめていい?最後だから。心配しなくても、もう変なことしないよ。」

「心配なんて…。」


如月君は少しだけ微笑んで、私の背中に腕を回した。


「俺の想いを、気の迷いなんて言わないで。…大好きだよ、亜希さん。」




暫く呆然と立ち尽くしていた。

我に帰ったのは、メイド長が休憩に来た時。


「貴女いつから休憩してるの。……亜希?亜希?」


目の前をひらひらしていた手が私の肩を掴んで揺らし、私の目線は心配そうな顔をしたメイド長を捉えた。

私…そうだ。如月君に…。


「具合、悪いの?」

「いえ、大丈夫です。」

「そんなこと言っても、顔赤いわよ。熱あるんじゃない?今日はもういいから、部屋に帰って寝てなさいな。」

「はい…。」


休憩室を出た私は、去り際にキスされた頬を押さえた。

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