impatient
4
それからすぐだった。
「…やめろ。」
「ふっ…?」
「萎えた。」
確かに陽高様の物は、懸命だった私に関わらず小さくなってしまっている。
口内から抜いて陽高様を見上げると、無表情でどこかを見ていて、それがとても恐く感じた。
怒らせた…!?
集中していなかっただけに、いつの間にか粗相があったのかと、血の気が引いていく。
「す、すみません!ごめんなさい…っ」
「給料はちゃんと上乗せしてやる。通常業務に戻れ。」
「はい…すみませんでした…。」
目が潤むのを感じながら、静かに退室した。
あんなので特別手当なんて貰っていいのかな。
私、ちゃんとできなかったのに…。
どこに落ち度があったのかと脳内で探していると、一つの答えに辿り着いた。
紗奈ちゃんに見られたから…?
本当なら紗奈ちゃん以外としたくないんだろうけど、あれが決定打?
そう考えると、納得がいった。
「亜希さん?」
廊下で背後から突然声を掛けられ、ビクリと体が震えた。
「き、如月君…!?まだいたの…?」
「まだいたのって…まだ5時だよ。いつもいる時間でしょ?どうしたの、亜希さん。すごい動揺っぷり。」
いつも陽高様の部屋でああいう事をしていた時は、他の仕事を済ませた遅い時間だったから、錯覚していた。
だけどそれ以上に、如月君の登場に、自分でも驚くほど動揺しているのがわかる。
感じる気持ちは、さっき陽高様の部屋で覚えた罪悪感に似ていた。
何となく、本当に何となくだけど、さっきまで何をしていたか、知られたくなくて、精一杯自分を取り繕う。
「何でもないってぇ。」
「陽高様の部屋にいたの?」
体が硬直する。
如月君の顔を見れない。
「それが、何?」
ドクンドクンと心臓が音を立てる。
手の平の汗をぎゅっと握った。
「何してたの?」
「…っ如月君に関係ないでしょ!」
頭に血が上って、…むしろ血が足りてないくらいで、カッとなった私は如月君を怒鳴り付けて、休憩室を目指して走って逃げた。
道中、すれ違ったメイド長に、廊下を走るなと注意されたけれど、それも構わず走り続けた。
「亜希さん。何で逃げるの。」
「別に…逃げたわけじゃない。」
やっと逃げ込んだ休憩室に、数十秒も経たず追い付いた如月君は、何の遠慮もなく入って来た。
仕事中にこんなに休んでるのは私くらいだし、他に誰もいないからだと思うけど。
先程のやりとりの手前、二人きりは罰が悪いような気になる。
ちらりと横目で様子を窺うと、如月君は溜息を吐いて、何かを考えるそぶりをした後、私を真っ直ぐ見つめた。
「陽高様のこと、好きなの?」
心臓を鈍器で殴られたのかと思った。
それほど大きな音と痛みを与えて、ドクンと波打った。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!