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impatient


それからすぐだった。


「…やめろ。」

「ふっ…?」

「萎えた。」


確かに陽高様の物は、懸命だった私に関わらず小さくなってしまっている。

口内から抜いて陽高様を見上げると、無表情でどこかを見ていて、それがとても恐く感じた。

怒らせた…!?

集中していなかっただけに、いつの間にか粗相があったのかと、血の気が引いていく。


「す、すみません!ごめんなさい…っ」

「給料はちゃんと上乗せしてやる。通常業務に戻れ。」

「はい…すみませんでした…。」


目が潤むのを感じながら、静かに退室した。

あんなので特別手当なんて貰っていいのかな。

私、ちゃんとできなかったのに…。

どこに落ち度があったのかと脳内で探していると、一つの答えに辿り着いた。

紗奈ちゃんに見られたから…?

本当なら紗奈ちゃん以外としたくないんだろうけど、あれが決定打?

そう考えると、納得がいった。


「亜希さん?」


廊下で背後から突然声を掛けられ、ビクリと体が震えた。


「き、如月君…!?まだいたの…?」

「まだいたのって…まだ5時だよ。いつもいる時間でしょ?どうしたの、亜希さん。すごい動揺っぷり。」


いつも陽高様の部屋でああいう事をしていた時は、他の仕事を済ませた遅い時間だったから、錯覚していた。

だけどそれ以上に、如月君の登場に、自分でも驚くほど動揺しているのがわかる。

感じる気持ちは、さっき陽高様の部屋で覚えた罪悪感に似ていた。

何となく、本当に何となくだけど、さっきまで何をしていたか、知られたくなくて、精一杯自分を取り繕う。


「何でもないってぇ。」

「陽高様の部屋にいたの?」


体が硬直する。
如月君の顔を見れない。


「それが、何?」


ドクンドクンと心臓が音を立てる。
手の平の汗をぎゅっと握った。


「何してたの?」

「…っ如月君に関係ないでしょ!」


頭に血が上って、…むしろ血が足りてないくらいで、カッとなった私は如月君を怒鳴り付けて、休憩室を目指して走って逃げた。

道中、すれ違ったメイド長に、廊下を走るなと注意されたけれど、それも構わず走り続けた。




「亜希さん。何で逃げるの。」

「別に…逃げたわけじゃない。」


やっと逃げ込んだ休憩室に、数十秒も経たず追い付いた如月君は、何の遠慮もなく入って来た。

仕事中にこんなに休んでるのは私くらいだし、他に誰もいないからだと思うけど。

先程のやりとりの手前、二人きりは罰が悪いような気になる。

ちらりと横目で様子を窺うと、如月君は溜息を吐いて、何かを考えるそぶりをした後、私を真っ直ぐ見つめた。


「陽高様のこと、好きなの?」


心臓を鈍器で殴られたのかと思った。
それほど大きな音と痛みを与えて、ドクンと波打った。

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あきゅろす。
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