impatient
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「ところで紗奈。例の物って?」
「あ。」
私はベッドを出てワゴンの向こう側に立ち、陽高様をちらりと見た。
陽高様は不思議そうな面持ちでこちらに近付いてくる。
ワゴンの前まで来た所で、皿を覆っていた蓋を開いてみせた。
「これは…」
「お誕生日、おめでとうございます。」
真っ白のクリームと真っ赤な苺が乗った、二段重ねのケーキ。
「紗奈が?」
「はい。如月さんに教えてもらって。」
「ああ…」
陽高様は呟いて、そのまま黙り込んでしまった。
あんなに反応を楽しみにしていたのに、急に後悔が押し寄せる。
「ごめんなさい…。パーティーでもケーキ出ましたよね。それに私、お菓子作ったの初めてだから美味しくないかもしれないし…陽高様のお口には合わないかも…ごめんなさい、迷惑でしたよね。」
一人で勝手に結論を出した私は、泣きそうになるのを必死に耐えた。
唇を噛み締めていると、陽高様の腕に閉じ込められた。
「嬉しいよ。ありがとう、紗奈。」
「でも…」
「あまり、俺を妬かせるな、ということだ。」
「はい…すみません。」
「…紗奈の誕生日は楽しみにしていろ。」
「?」
「もっと大きいケーキを作ってやる。」
その後、陽高様は美味しいと言って沢山ケーキを食べてくれた。
私も一緒に食べたけれど、当然二人では食べ切れず、亜希さんや仲のよいメイドにもおすそ分けした。
「美味しかったよ。デザートに紗奈を食いたい。」
「えっあの…」
ケーキもデザートではと指摘しようとしたが、その前に生クリームよりも甘いキスに思考を蕩かされてしまった。
---Fin
2008/03/30
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