impatient
3
「んっんっ……ふぁ…あ!」
キスを続けたまま、陽高様は挿送を開始する。
私は生理的な涙を流しながら、それを受け止めた。
陽高様の、愛を。
「んっんっん…はぁ…っん…」
「……っは…紗奈…」
ずっと唇を塞がれたまま、喘ぐこともままならず、ただただ陽高様を感じる。
陽高様の額に浮かぶ汗。
手を回した背中の広さ。
何もかもが愛しい。
「紗奈…っ愛してる……」
「はい、私も…愛してます…っあああ!」
自分の限界を見た一瞬後、薄いゴム越しに陽高様の飛沫を感じた。
陽高様は倒れるように私に覆いかぶさり、ぎゅっと私を抱きしめた。
その熱も重みも、全てが私を幸せにする材料となる。
やがて徐にベッドを離れ、水の入ったグラスを持ってきてくれた。
礼を言って受け取ろうとするとグラスを遠ざけられ、陽高様の顔が近付く。
口を開くと、ぬるい水分が入り込んできた。
喉を鳴らして飲み込み、陽高様を見つめる。
「紗奈。」
「はい。」
その時、部屋の扉のノック音が響いた。
やましいことをしていたわけではないが、私はびくりと体を震わせた。
陽高様は小さく溜息を吐いて、ノックの主に声をかけた。
「入れ。」
「失礼いたします。」
陽高様は、私の素肌を隠す様に布団を首まで掛けてくれ、上半身裸のままベッドの縁に座った。
部屋に入ってきたのは、如月さん。
心なしか、陽高様の目付きが険しくなった気がする。
「紗奈様、例の物をお持ちいたしました。」
忘れかけていたが、にこりと笑った如月さんのおかげで今日の計画を思い出した。
はっとして上体を起こす。
「あ、ありがとうございます。」
すると如月さんは驚きの表情を浮かべ、顔を僅かに赤くした。
「失礼いたしました。」
その理由に私が気付いた時にはもう遅く、如月さんは金色のワゴンを置いて足早に去っていった。
ふかふかの布団のおかげで胸から下は見えていないが、露出した肩がそれまで何をしていたのかを語っているだろう。
「恥ずかしい…」
「彼は随分、初な反応を見せるな。」
クスクス笑う陽高様に、笑い事じゃないと心の中で毒づくが、機嫌が悪くなっていないことに安心しながら、衣服を身に纏った。
よかった。如月さんとの誤解は完全に解けたみたい。
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