impatient
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目が覚めた時見えた景色は、いつも通りモノクロの世界だった。
「しばらく安静になさって下さいね。」
検査が終わり、白衣の男に見送られる。
多数の患者や見舞客用のが出入りする門の傍、見慣れた車のドアが開いた。
「おかえりなさいませ。」
奥に座っている若いメイドが、嬉しそうに笑う。
後部座席のドアを閉めた大澤は助手席から振り向いて、携帯電話を差し出した。
「皆様ご心配されておいでです。大旦那様と大奥様にもご連絡は差し上げたのですが、是非陽高様ご自身でいかがでしょう。」
「ああ、そうだな。」
なんでも、数日間ずっと眠っていたらしい。たまに目を開けても意思疎通のできる状態ではなかったと、最初は他人事のように聞いた。
今朝やっと、はっきり目が覚めたのだと、大澤は言った。
いくつか検査のようなものをして、問題はないと退院が決まったのが正午だ。
「今日はお祝いですね。陽高様、何か食べたいものはありますか?」
両親への連絡が終わった俺に、隣のメイドがうきうきと話かける。
「あ、でも、しばらく点滴のみでしたから、最初は胃に優しいものだけですよね。」
答える前に結論に達したようで肩を落として見せた。
彼女の第一印象は、人懐っこい奴。
最初に目が合った時、あまりに嬉しそうに笑ったため、顔見知りかと記憶を探ったほどだ。
家に着く直前にふと気になった、堂々と上座にいることは、若さゆえの常識知らずなのだろう。
大澤は何も注意しなかったのか。
そもそも大澤がいるなら、メイドなど必要ないだろうに。
眠り続けていたせいか、なんとなくぼんやり、そんなことを考えていた。
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