2nd Season
TROUBLE CARE。
2月になって、波乱の番組【アイドル歌上手王座決定戦】が放送され、出演した俺達にも色々な変化があった。
3回戦前にインタビューされた所も皆それぞれちゃんと放送されてた。
俺のインタビューの所では、アズマ君が乱入したシーンも使われてて、「カッコイイアズマ君が見たい」とか言ってた所なんかが、画面下にテロップが入って、
『カッコイイ吾妻君が見たいから3回戦頑張ってね』
とかって、勝手にハートマーク付けられちゃったりしてて、俺が1人怒り……。
決勝でアズマ君が歌ってる途中で俺が涙を零すシーンもバッチリ放送され……下手なコメント途中で泣き出してアツシアキラに連行される様や、アズマ君が『泣いちゃうから使わないで』と言ってた所まで放送され……。
勿論最後の無意識エロ発言も使われ……。
他の皆の見所も伝えたいけど、俺にはダメージが大き過ぎて上手くお伝えできません………。
「おはようございます。」
テレビ局の廊下で、明るい声と共に背中を叩かれた。
『SPG』のサナエちゃんとモエナちゃん。
「久し振り。今日は歌番ですか?」
「はい。」
嬉しそうに笑うサナエちゃん。
あの番組で大健闘したサナエちゃんは、『SPG』内の新ユニットでセンターを歌う事になったんだって、優花ちゃんから聞いた。
あの番組収録中にサナエちゃんと話す事は無かったけど、あれから度々仕事場で会うと手を振ったり挨拶したりと軽く仲良くなれた気がする。
「私、メンバーやファンの人達からね、ヤマナツ君と口が似てるって言われるんですよ?」
ウフフって笑ったサナエちゃんが自分の唇を指差して教えてくれた。
…………それって。
「アズマ君もね、俺とサナエちゃんの口が似てるって、……言ってた。」
その後に言われた言葉は流石に伝えられないけど。
「それで、今日はねぇ……。」
モエナちゃんが紙袋からピンクの紙に包んだ物を出した。
「ヤマナツ君にプレゼントですー!」
「え、何?ありがとう。」
受け取ってからそれが重みのある本だと気付く。
「SPGの写真集inグアム!」
「え!?」
それを…俺にくれちゃう理由って、やっぱり……、
きっとみるみる赤くなってる俺に向かって2人が笑顔で声を揃えた。
「女の子達の素晴らしい写真、だよ!」
恥ずかしくて泣きそうだ……。
いや、しっかり貰うけどね、見るけどね。
「ありがとう………、グアムって事は水着?」
「やだぁ、ヤマナツ君。」
楽しそうに笑うサナエちゃん。
「じゃぁ、お礼にアズマ君の写真集をプレゼントするよ。」
まだ撮影も始まってないけど。
モエナちゃんもサナエちゃんもすこぶる笑顔で「うん、待ってる!」って返事した。
「やっぱ、皆アズマ君の事好きなんだね〜。」
つい吹き出して笑った俺に、2人は目を瞬かせて顔を見合わせた。
「いや、ヤマナツ君程じゃないって!」
そうツッコミの言葉を残して去って行くサナエちゃんとモエナちゃん……。
呆然と佇む俺。
俺の後ろで黙って見てた織田さんが慰めるように俺の肩を叩いた。
あと、番組放送の翌週、宇佐美マコトさん達のグループ『MTAO』が解散を発表した。
それぞれにソロタレントとして、別々の道を歩むのだと会見で大島さんが話してた。
『MTAO』の事務所はウチの事務所よりもタレント数が多い大きな事務所だから、きっとこれから度々顔を合わせる事もあるだろうって織田さんが言ってた。
あれから1度だけ、テレビ局の廊下で擦れ違った。
「アホナツ。」
って呼ばれた。
「うっさい、バカウサギ。」
って返したら、宇佐美さんはフハってあの時みたいに笑った。
周りに居た『MTAO』のメンバーやマネージャーさん、High-Gradeのメンバーと織田さんは、目が点になってたけど。
例の番組の収録の時には『MTAO』の解散は決まっていて、宇佐美さん達の事務所はあの番組で『MTAO』に脚光を浴びせ、宇佐美さんを華々しくソロデビューさせたかったのだろうってゆう憶測も、織田さんから聞いた。
控え室で、サナエちゃんとモエナちゃんに貰ったピンクの包みを開けた。
「ぅおぉ、眩しい!」
女の子達の弾けんばかりの水着姿に、思わず顔が綻ぶ。
男だもん。
「わ、サナエちゃんて結構………、あ、モエナちゃん発見。」
ページを捲りながら知った顔を探す俺。
「優花ちゃん、やっぱ可愛いなぁ〜。」
カラフルな水着を纏った、屈んだ女の子達の谷間を思わず凝視。
「何見てんだ、エロナツ。」
「あ、おはよう。」
一緒の仕事のアズマ君が局入り。アズマ君の後ろに高島さんの姿も見えた。
表紙を見せて、サナエちゃん達に貰ったと説明する。
「そうだ!……お前のせいで俺の写真集肌露出が増えそうなんだけど、どうしてくれんだよ!」
「あ、そうなの?いいじゃん、脱いどけ脱いどけ!見せとけ見せとけ!」
「この野郎……!」
軽〜く言った俺がまた『SPG』の写真集を開き女の子達を眺める。
「そういえば、勝った方の言う事聞く約束、覚えてるだろうな、ヤマナツ。」
へ?……何、それ。
「3回戦前に言ってただろ。」
アズマ君が俺の向かいに座って写真集を下げようと本を指で押さえる。
「確かに言ってました。山本君もはいって了承してましたね。」
高島さんがアズマ君の衣装のタグをチェックしながら口を挟む。
そう言われれば、そんな約束をした気がしないでもない。
「放送でも流れてたぞ?」
織田さんが俺の前のラックに俺の衣装を掛けた。
「俺の写真集に、お前も入れ。勿論肌露出ページだ。ノーギャラでな!」
「な、無理でしょ!」
滅茶苦茶な命令しやがって!
「いや、無理じゃねぇぞ?今回は番組副賞の写真集でカメラマンと吾妻のプロデュースだからな。」
「いいんじゃないですか?10ページ分位山本君が絡むページがあっても。」
凄く具体的なページ数を口にする高島さん。
織田さんと高島さんが、俺の良く知る仕事を強引に進めようとしてる時の顔に、背筋に冷や汗が流れた気がした。
「売れそうだ。」
3人が声を揃えた瞬間、俺のスケジュールにアズマ君の写真集撮影に同行(ボランティア)と書き込まれた。
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