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2nd Season
劣情と感情。


ふわふわの毛布はとても心地良くて、身に着けたパジャマも洗いたてで肌に感じるサラサラした感触が気持ちいい。

のに。

「………眠れねぇ〜……。」

置き時計のデジタルを見て時間を確認した。

アズマ君は、まだ帰って来ない。

広すぎるベッドで寝返りを打つ。

アズマ君の誕生日に自分がプレゼントした大きいサイズのベッドなのに、

「広すぎるよ……。」

1人で寝るには余った空間が寂しい。

なんて、いつもは思わない事を考えるなんて、今日の俺はやっぱおかしい。

早く、帰って来てよ。

何度も呟いた独り言でも、その言葉だけは口に出さないように心の中で思う。

本当は、口に出してしまったら…急にもっと寂しくなってしまう気がするんだ。

早く、帰って来て。

口に出さなくても、心の中で何度もそう思ったら、口に出したのとそう変わらないじゃないか。

それでもやっぱりまた思ってしまう。

早く……帰って来て。


微かに聞こえたドアの閉まる音に、身体を起こす。

毛布と布団から出た身体が寒くて下半身がベッドから出るのを躊躇った。

足音と共に部屋のドアが開いた。

「……ただいま、まだ起きてたのか?」

「おかえりなさい。」

廊下の明かりが眩しい。アズマ君の背後が明るくて顔が見えない。

荷物をドアの横の壁に置いたアズマ君が上着を脱いでベッドに近付いてきた。

「疲れた?」

「ん?……そりゃまぁな。」

少し笑いながら首に巻いたショールを解き、ベッドに座る俺を見下ろす。

両方の手をアズマ君に伸ばした。

「ヤマナツ……?」

俺の手に触れたアズマ君の身体は冷え切ってて、すぐに近くへと寄り添ったその頬も凄く冷たくて。

「セックス、したいん、だけど。」

途切れ途切れにそう伝えると、短く「ん。」って返事が聞こえた。

「風呂、入ってくるから待ってて。」

「やだ、今すぐがいい。」

「……色んな臭いがしてるし汚ぇぞ。」

肩に置かれたアズマ君の手が、俺の身体を引き離すのかと思ったら急に切なくなって首に手を回した。

ほこりの臭いとタバコの臭い、コーヒーの臭いと化粧品の臭いと、アズマ君の汗の臭い。

「ヤマナツ。」

ぎゅって、俺の身体を抱き締めてくれたその腕が、背中をポンポンって叩いた。

「エアコン、点けようぜ?」

「………うん、」

離れたく、ねぇのに。

エアコンのリモコンでスイッチを入れると、アズマ君が服を次々と脱いで床に落としていく。

ズボンからベルトを抜いて、ウエストのホックを外し、片脚をベッドに乗せる。

毛布を引っ張って2人でベッドに潜り込むように横になる。

「臭くねぇか?」

「アズマ君の匂い。」

「煽んな。」

苦笑いしたアズマ君がおでこや瞼に唇を寄せて来る。

「………ん、……ぁっ、」

「どうしたんだ?これ。」

パジャマの上着の裾から、温もりを取り戻し始めたアズマ君の手が、真っ先に胸の上までを撫でてきた。

「や、ぁ…、ん、」

「やじゃねぇだろ。イヤだったらこんなんならねぇぞ?」

そんなの、そこが今そんな風になってんのは寒かったからだと思うけど。

「自分でボタン外せよ。」

耳に、低く囁かれる。言われるままに手がパジャマのボタンを外し始める。

毛布の中の2人の身体が動く度、冷たい空気が入って来る気がして、無意識に小さく動いた。

俺の胸の上にある乳首に触れるアズマ君の指が薄明かりの中でぼんやり見える。

「痛っ、」

爪が、引っ掻くようにそれを弾いた。

零れた声に構わないで、その意地悪な指は今度は強く摘んだ。

そんな風にされたら、寒かったからっていうだけの状態じゃなくなってしまう。

「キス、したい…。」

そうお願いした俺の声は恥ずかしい位に既に掠れてて。

「カズミ。」

アズマ君の本当の名前を口にする。

「その気になんのが早過ぎるだろ。」

からかうように笑い混じりに言ったアズマ君が被ってた毛布を捲って俺の体の上に膝立ちで跨る。

着ていたインナーを裾から捲るように一気に脱いで、また床に落とす。

エアコンの風が温かい。

アズマ君の寛げられたボトムのウエストから覗く下着の前が、少しだけ膨らんでる。

良かった、興奮してんの…俺だけじゃない。

肘をついて身体を起こし、アズマ君の下着の覗く股間に手を持っていく。

まだ、半勃ち。

「エロい触り方。」

上から、俺の好きな低い声が聞こえる。

布越しにその塊を愛撫する。

顔を上げてアズマ君の顔を見る。誘われるように唇に口付ける。

頭の後ろを掴まれて、そのキスが深く深くなる。

絡んだ舌と、求め合う唇。

アズマ君とするキスは、いつも気持ち良い。

唇が離れそうになる。まだ、終わらせたくない。

首を伸ばして、アズマ君の口に噛み付く。

少し驚いたように顔を顰めたアズマ君の表情を見たくなくて、目を瞑った。

もっと、ずっと、していたい。

お互いの口から、俺の顎に唾液が伝って零れた。

「目、……開けろ。」

ほんの少しだけ唇が離れた隙に、アズマ君が短く言った。

瞼を上げると、俺の良く知る大好きな優しい眼差しがすぐ近くにあった。

ちゅ、って唇同士を軽く重ねた後、アズマ君の手が俺のパジャマの開いた部分を摘んで顎を拭った。

「どうやって、して欲しい?」

「………え?」

「甘く、優しくしてやろうか?それとも、」

パジャマの上着を脱がされる。

「激しく強引にして欲しいか?」

目を真っ直ぐに見つめられて、その視線から目を逸らせなくなってしまった。

「どんな風にしたらお前は満足するんだ?」

………あぁ、やっぱり分かるんだ。

今日の出来事で俺が落ち込んでるって、アズマ君には隠せないんだ。

だったら、

「………できるだけ、滅茶苦茶に、して。」

今だけでも、何も考えられなくなるぐらい、

俺の中をアズマ君で満タンにして欲しい。

両腕をアズマ君の背中に回して胸に顔をくっ付ける。

色んな感情や情報が俺の中に流れ込んで来て、

「壊れそう、」

口から漏れた中途半端な俺の言葉に、アズマ君は抱き締め返してくれる。



日付が変わるまで仕事をしてきて凄く疲れてるはずなのに、アズマ君は俺が意識を手放して眠ってしまうまで、望んだとおりに俺を滅茶苦茶にしてくれた。



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