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2nd Season
銀の雪A


頭にタオルを被ったヤマナツが手帳と届いたばかりの封筒を手に俺の部屋に入って来る。

ベッドに座り、手帳の中から封筒を取り出す。

多分去年の手紙。

今年の手紙を手帳に挟むその仕草をじっと見つめる。

「持ち歩いてんのか?」

「うん、何となく。」

去年の封筒の端っこが少しくすんでる。

封筒より大きいサイズの手帳の、裏表紙のカバーの折り返しの中に入っていたその封筒。

何となく…でも、その手紙を大切に拠り所にしているのかと思った。

封筒の封を開け、中から2つ折のカードを出して開くヤマナツ。

「見てみる?」

「いいのか?」

「ん。」

ベッドに寝転んだ俺にカードを手渡してくれる。

「……ん?」

思わずそんな声が出てしまう。

「気になってたんだろ?」

そりゃ、どんな事が書いてあるのかなぁ…って。

カードを閉じてヤマナツに返す。

俺からカードを受け取ったヤマナツは、もう一度カードを開いて中を見てた。

封筒にカードを戻して、手帳に挟まないでチェストの上に置いたヤマナツがタオルを首に掛けた。

「…………寝よっか。」

照明のリモコンのボタンを押し、明かりを落とす。

嬉しそうに笑ったヤマナツが濡れたままの髪の毛を軽く指で梳いてベッドに潜り込んで来る。

自分の方の枕にタオルを広げて頭を乗せたヤマナツを、枕に腕をついてその様子を見てる俺。

「おやすみ。」

「ん、おやすみ。」

……………、

「なぁ。」

俺の呼び掛けに視線だけで俺に向いたヤマナツ。

「…………あのさ、」

ヤマナツの口元が笑ってるように見える。

「何て、書いてあったんだ?」

「あ、やっぱ読めなかったんだ。」

気付いてたんなら教えろよ!

「だって、あれ……英語でも無かっただろ?」

「そう、フランス語。」

そりゃ、高校卒業したらパリに留学する予定だったんだから、お前がフランス語も出来るんだろうなって、理解は出来たけど。

「何、毎年フランス語で来るのか?」

「そうだよ、サンタクロースはフランス人なんだよ。」

本当かよ!心の中でツッコミを入れる俺。

「なぁ、何て書いてあったんだよ。」

「フランス語とか英語とかってさ、ニュアンスが捉え方で違うんだよね。」

「日本語でもそうゆう言い回しあるだろ。」

皮肉とか大袈裟とか……。

「………本当に、欲しい物、ってトコかな。」

「ふぅん?」

それって、俺……期待してもいいのか?

「で、ちゃんとそれは貰えたのか?」

「どうだろ。」

何だよ、本当に欲しいモノって俺じゃねぇのかよ。

「多分、本当に欲しいものが何か、自分で思い知る事ができる、みたいな感じ。」

貰えたとか、いう次元の話じゃなかったのか。

感じるものなんだ。

「なんつうか……ある意味、粋だな。サンタクロース。」

「でしょ?」

楽しそうに笑ったヤマナツの頭を撫でた。

顔を寄せてキスをした。

「あ、コレあげる。」

ヤマナツが枕の下から手を出して、手に収まる小さな包みを差し出した。

スチールペーパーに包まれた5cm四方もない大きさのそれ。細い緑のリボンと金のシールでデコレーションされてる。

「クリスマスプレゼント。」

ふわりと笑ったその顔が可愛くて、身体を起こして手の平の中の小さなペーパーを開く。

重みのある包みを捲ると、白い薄紙に包まれた小さな物が見えた。

軽い音を立てて紙を開くと、対で無く1つだけのピアスだった。

俺の耳は片方だけ2つ穴が空いてる。

透明の石が埋め込まれたシンプルなデザインのそれを指で摘む。

「これって、雪?」

そのモチーフの姿を確認しようと隣を見下ろすと、静かに寝息を立てるヤマナツの寝顔。

寝ちゃったか。

そりゃ疲れるよなぁ、コンサート2公演踊りっぱなしだし。

プレゼントを簡単にまた包み直してベッドから降りてチェストに置いた。

「俺のプレゼントも受け取れよな。」

小さく独り言を呟く。

チェストの引き出しから、赤いリボンのかかった白い箱を出してヤマナツの手帳の横に置いた。

ヤマナツの手帳の上に置かれた封の開けられた手紙。

去年の贈り物の「本当に欲しいモノ」。


それが、俺だったらいいのに。

そう思ってしまうのは、俺のわがままだろうか。


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