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2nd Season
10.23.


翌朝、ヤマナツの部屋のカーテンを開けて布団を折り畳んだ。

夜中まで起きてて、朝方に目が覚めた。ここ最近の睡眠時間は3時間程。良く眠れても5時間位だけど。

余り早く起きて活動を始めるとヤマナツを起こしてしまうから静かにしていた。

開けっ放しのドアの向こうから足音が聞こえた。ヤマナツも起きたのだろうか。

寝癖のついた髪のまま、ヤマナツが部屋を覗いた。

「おはよう。」

そう声を掛けてやったら、一瞬泣きそうな顔になって下を向いた。

「どうした、まだしんどいか?」

近付いて頬やおでこに触れると、俯いたまま首を振ってた。体温もほとんど平熱だろうと感じた。

「夏希?」

「……ごめん、なさい。」

ん?何で、ごめんなさいなんだ?

昨日はまだ本調子じゃないから部屋を交換したまま別々で寝ると話したじゃねぇか。

下を向いたままのヤマナツの顔を覗こうとしたら、しがみ付くように抱きついてきた。

「………夏希。」

背中へ右手を回して、左手で頭を撫でた。

「……誕生日…だったのに。」

小さな、消えるような声でヤマナツが短く言った。

あぁ。

昨日はそんな事考えられる状態じゃなかったんだな。

で、目が覚めて俺の誕生日が過ぎてしまった事に気が付いたんだろう。

両手でヤマナツの身体を抱き締めた。

「サプライズパーティー、計画してたんだろ?」

返事は無い。ヤマナツの手が俺のジャージの背中を握った。

「アキラがブログに書いてた。」

ヤマナツの背中をポンポンと宥めるように叩く。

「サプライズはもういいから、ちゃんとお祝い言ってくれればいい。」

「23日に、なっちゃったけど?」

「ハハハ、そう。もう23歳になったからな。」

顔を上げたヤマナツが俺を見て困ったように口を結んでた。

「言ってくんねぇの?」

おめでとう、って。

こんな事を自分で催促すんのもどうなんだよ。

「誕生日、……おめでとう。」

お祝いを言う方のヤマナツが照れくさそうに上目遣いで俺を見る。

超可愛い。俺のヤマナツ。

「はい、ありがとう。プレゼントは?」

「………無いの。」

へ………、

きっと変な顔なんだろうな、俺。

「今年も思いつかなくて、ごめん。」

「んー…、まぁ別にいいけど。」

ちょっと、いや、かなり楽しみにしてはいたんだけども。

「サプライズ、をね。ちょっと気合入れてたんだけど、もう出来ないよね……。もうサプライズにならねぇし。」

バツの悪そうな顔をしたヤマナツが、なんだか気の毒になってきた。

「いいってば。それより早く元気になってたっぷりイチャイチャできればそれでいいから。」

「…………いつもと変わんねぇじゃん、それじゃ。」

呆れた顔をしたヤマナツが苦笑い。

「そうだな、でも。」

ヤマナツの身体を抱き締めておでこにキスした。

「本当に、お前がいればもういいんだよ、俺。」

「………ちゃんと、するから。待ってて。」

ぎゅう、ってヤマナツが俺の身体を抱き締め返してきた。

ちゃんと?するって?

イチャイチャをちゃんとするのか?

ヤマナツの表情が、何か決心したような真面目な顔になってた。

俺は本当に、お前が元気になってくれただけで充分なんだけどな。

そして約束通り、この後お風呂へ入り、ヤマナツの髪の先から足の指まで丁寧に洗ってやった。

時々悪戯をしてもされるがままになっていた恋人は、やはり昨日の俺の誕生日を忘れていた事に負い目を感じていたのかも。

病み上がりの身体にあんな事やこんな事、なんかはしねぇけど……。




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