忠実恋愛事情
6
「あ、鈴斗!大丈夫だった?」
「あぁ、転校生のことだった。やりすぎない程度の制裁の許可はとれた」
まぁ、普通にやっても構わないとは言われたが……。
志季様の従兄弟様となってしまえば話は別だ。
志季様に近づけるなと言われたからには、近づけないようににするつもりだ。
だが、上へ報告が行ってしまうとどうすることもできない。
志季様のお父様が釘は刺してくれるとは思うが、そう簡単にいくはずがない。
「なにか、言われたんじゃ」
「いや、大したことじゃない。……ところで、転校生はどこだ?」
教室内を見渡すが、姿が見えない。
話が話だっただけに、感覚が鋭くなるのがわかる。
とにかく、志季様に近づけることだけは避けなければ。
「えっとね、会計様が連れってちゃった」
「っ、どこへ!?」
「た、多分生徒会室……って鈴斗!?」
まずい。
今から走って間に合うだろうか。
いや、間に合わせてみせる。
これくらいできなくちゃ、護れない。
「茉貴、集会はやはり来週の放課後に変更だ。皆にすまないと言っておいてくれ、頼んだ」
最大速の速さで、とにかく速く。
限界なんて気にしている場合ではない。
とにかく、転校生が着く前に志季様を……。
接触させるわけには、いかないっ。
この階段から行けば、近い!
「うをっ!?」
「っあ……」
まずい、落ちる――っ
「っ、ぶねぇ……。って、鈴斗?どうした」
「ぁ、かいちょ……さま?」
「あぁ。だが、珍しいな。鈴斗が全力疾走なんて……。どうした」
「転校生っ、生徒会室行った……聞いてっ」
なんだ、苦しい。
まるで呼吸ができてないみたいな、息苦しさ。
いや、違う。
本当に呼吸ができないんだ。
呼吸のしかたを忘れたかのように、息ができないんだ。
「あいつがか……。そうか、ありがとな」
「いっ、え」
「鈴斗?……おま、息!?」
「だ、じょ……で」
大丈夫だと伝えられない、こんな状況に陥った自分にイラつく。
声すらも出せないなんて、どうして。
「大丈夫なわけないだろ!いきなり、あんな速さで走るから」
「ほ、とに……だいじょ」
「喋るな!背中、痛いかもしれないが耐えろ」
志季様が言い終わらないうちに、ものすごい衝撃が背中から伝わってきた。
背骨が折れるんじゃないかと思うくらいの衝撃だ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!