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忠実恋愛事情



「あ、鈴斗!大丈夫だった?」

「あぁ、転校生のことだった。やりすぎない程度の制裁の許可はとれた」


まぁ、普通にやっても構わないとは言われたが……。
志季様の従兄弟様となってしまえば話は別だ。

志季様に近づけるなと言われたからには、近づけないようににするつもりだ。
だが、上へ報告が行ってしまうとどうすることもできない。

志季様のお父様が釘は刺してくれるとは思うが、そう簡単にいくはずがない。


「なにか、言われたんじゃ」

「いや、大したことじゃない。……ところで、転校生はどこだ?」


教室内を見渡すが、姿が見えない。

話が話だっただけに、感覚が鋭くなるのがわかる。
とにかく、志季様に近づけることだけは避けなければ。


「えっとね、会計様が連れってちゃった」

「っ、どこへ!?」

「た、多分生徒会室……って鈴斗!?」


まずい。
今から走って間に合うだろうか。

いや、間に合わせてみせる。
これくらいできなくちゃ、護れない。


「茉貴、集会はやはり来週の放課後に変更だ。皆にすまないと言っておいてくれ、頼んだ」


最大速の速さで、とにかく速く。
限界なんて気にしている場合ではない。

とにかく、転校生が着く前に志季様を……。
接触させるわけには、いかないっ。

この階段から行けば、近い!


「うをっ!?」

「っあ……」


まずい、落ちる――っ











「っ、ぶねぇ……。って、鈴斗?どうした」

「ぁ、かいちょ……さま?」

「あぁ。だが、珍しいな。鈴斗が全力疾走なんて……。どうした」

「転校生っ、生徒会室行った……聞いてっ」


なんだ、苦しい。
まるで呼吸ができてないみたいな、息苦しさ。

いや、違う。
本当に呼吸ができないんだ。
呼吸のしかたを忘れたかのように、息ができないんだ。


「あいつがか……。そうか、ありがとな」

「いっ、え」

「鈴斗?……おま、息!?」

「だ、じょ……で」


大丈夫だと伝えられない、こんな状況に陥った自分にイラつく。
声すらも出せないなんて、どうして。


「大丈夫なわけないだろ!いきなり、あんな速さで走るから」

「ほ、とに……だいじょ」

「喋るな!背中、痛いかもしれないが耐えろ」


志季様が言い終わらないうちに、ものすごい衝撃が背中から伝わってきた。

背骨が折れるんじゃないかと思うくらいの衝撃だ。

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