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新月を追って
10
「外村…」
「直哉も一緒で、なにしてんのお前ら」
「別になにも?」

 応えたのは直哉だった。
敦志は声を出すどころか、まともに顔を見ることさえ出来なかった

「心配したんだぜ?帰ってこないし」
「あー…外村、部屋一緒なんだ」
「そう、昨日はそっちいたんだ?こいつ」
「うん帰りたくないっーから」

 何気ない会話を聞いているだけなのに敦志は針の筵にいるような気分だった。外村がこっちを見ているかどうか顔も上げられない敦志にはわからなかったが、痛い視線を感じるような気がするのだ
 その内、直哉が敦志を気遣ってか立ち上がり外村を連れて少しばかり遠ざかってから何やら外村に尋ねていた

「いじめ?そんなのねぇって」

 直哉の気遣いも空しく外村の大きな声は敦志まで届いていた。複雑な気分になりながらも、まだ続く声をただ聞くことしか敦志には出来なかった

「早く馴染んでもらおうと想って…ってのはあったかもだけど俺らはいじめてるつもりはなかったけどな
まぁ…中西にはキツかったかもだけど俺から言っとくよ、笹山さんに」

頼む、という直哉の声が聞こえ

「後は俺が連れて帰るから…じゃあな」


 怖いくらいに饒舌に喋っていた外村は適当に言いくるめて直哉を部屋に帰らせてしまった。少し不安そうに見ながらもなんとなく外村に逆らえず直哉は去っていった

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