新月を追って
6
練習試合の話しだろう、敦志と直哉は共にベンチ入りは果たしていたが敦志は出番もなくベンチを温めただけだ。
一方、直哉の方は後半に投入されシュートは打ったもののゴール枠を大きく外れたり、相手GKにセーブされたりしていた
「あと1点欲しかったですね」
「あぁ…お前さ、ベンチなんだな吃驚した」
「吃驚?」
「一年でってあんまねぇよ?」
身体をもくもくと洗いながら直哉が言う。
敦志の通う学校はそれなりにサッカーでは名の通った学校だった。そのため部員数も多かったが使えるグランドは限られていた。それだけが理由ではないが大抵の一年は雑用が主でレギュラーと補欠でボールを使った練習をするのだがその練習に加わることはなかなか出来ない
逆に言えば今レギュラーや補欠になっている二年、三年も大抵その雑用だった一年時代を通ってきているのだ。その苦労を味わわず同じ位置に来た奴がいたら快く想わない者も当然、出てくるだろう
笹山たちもきっとそうなんだろうと敦志は想い、そして直哉に視線を向けるとこの人もそうだったりするんだろうかと想った
「…でもお前上手いし、当然だな」
敦志の不安を裏切り直哉が笑顔を見せる
「大変だろうけどがんばれよ」
初めて先輩に優しい言葉を掛けられた気がして敦志はとても嬉しい気分になった。と同時に少しでも直哉を疑った自分が嫌になった
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!