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新月を追って

 大浴場は宿泊棟とは離れていて階段を下ったりもしなくてはならず、やっとの思いで『湯』と書いた暖簾の掛かった引き戸にたどり着いた
 ガラガラッと引き戸を開けると広い脱衣場には誰もいなかった。
 ほっとしながら竹で出来た棚に載った竹で出来た籠に着替えを入れ、手早くジャージを脱ぎ裸になるとタオルを持って曇りガラスの引き戸の向こうの大浴場に足を踏み入れた。
 何処からか水の音はするものの大浴場にもまた人はいなかった。広いところに一人、というのは奇妙な気分だったが敦志は足を進め、洗い場の適当なところに木で出来た風呂用の腰かけと桶を持ってきて座った
 いつもなら髪を洗うのだが、今日はなにより先に身体を洗うことにした。とにかく早く汚れを落としたい。ボディソープをタオルに取りタオルで念入りに身体を洗った
 運動部だけに小さな傷はよくあったが明らかに今日出来たであろう痣などを見つけると敦志は気分が沈んだ
 蛇口を捻りシャワーを出し、降り注ぐお湯を浴びながらぼんやりと思い出したくないことを思い出しそうになる
 敦志は懸命に頭を横に振り、考えないようにと自分に言い聞かせた。

 ボディソープを綺麗に流し終わると後回しにしていたことに取り掛かることにした。後孔に中出しされた精液を掻き出すのだ、松島が言うには後孔に指を入れて出すらしい。
 ほとんどの人間は生まれてから一度だって自分のそこに指を突っ込んだことなどない、それをするのは結構な屈辱だった。しかし、やらないというわけにもいかない
敦志は恐る恐る自分の後孔の入り口に指で触れた

「っ…」

 傷ついたそこはそれ以上触れられるのを拒むように痛んだ。痛みに耐えながらも慣らすように撫で続けるとその内、痛みにも慣れた。
 しかし中に入れるのにはやはり戸惑う、息を整えて思い切って指を突き入れた。いったん入れてしまえば後は吹っ切れて事務的に中から精液を掻き出した
 何度かやっているうちに足元から排水溝まで白い筋が出来、それを見ながら敦志はやはりこの事実から逃れられないことを悟った

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