新月を追って
8
「あっちゃん、それ食べないの?」
「んー…」
畳敷の大広間に横長に向かい合うようにして配置されたお膳を囲んで部員たちはわいわいと食事中だった。
隣に座った千田が敦志のお膳を覗き込みながらたずねてきたが、敦志はお膳に目を落としたまま、今日の直哉の様子が頭から離れずにいた。
「食べないならちょーだい」
「いいよ」
「やったー」
ありがとー!とご機嫌に言って千田は横から、ひょいっと敦志のお膳の肉団子を箸でとって頬張り嬉しげな笑顔を浮かべる。
肉団子が口に消えるまでぼんやり見ていた敦志は、千田と目が合うと漸く照れくさそうに微笑み返した。
「…なんか悩んでる?」
それを合図にしたかのように、急に千田が敦志に抱きついてきて尋ねた。
ベビーフェイスに大きな瞳に見上げられると、途端に直視できない照れくささに目を逸らし口ごもる敦志。
なかなか口にできず、寧ろ離れてほしくて身体を後ずらせると応えを得ようと千田は離れず、ますます身体を密着させてくる。
千田をそういった対象でみているわけではないが、そう密着されるとさすがの敦志もドキドキしてしまう。
寧ろ誰か助けて欲しい、そう思った時
「ちょっとー!千田ぁあ、俺の中西ちゃんに何してんのっ」
「痛っ…松島先輩ひっど」
突如、松島が二人の間に割って入ってきた。
思いっきり力をこめて押し離したのだろう、千田は畳に倒れてしまった
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