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新月を追って

「やるか」

 ふと笑みを浮かべながら声を掛けられ、敦志は頷きながらも直哉が"いつもどおり"であることに安堵する。
 ストレッチをするために伸ばされた手が触れる寸前で思わず目を閉じてしまい、触れられた手の感触を意識して敦志は胸を高鳴らせる。
 手を握られたまま、互いの片足をぴたりとつけるとハーフパンツを履いているせいで手だけではなく足までも素肌が触れ合ってしまった。
 けれど収まることのない心音に動揺する敦志に構うことなく直哉は淡々とストレッチを進めていく

「…も少し、乗っかっても良いけど?中西?」
「あ…すいません」

 ストレッチも終盤に差し掛かると、足を開いて座り体を倒すストレッチになった。それをする直哉を手伝って背中に体重をかけて押すのが今の敦志の役目だったが思わず加減してしまっていたようだ。
 挽回しようと体重を乗せると今度はイテテテと声を上げられ先ほど以上に敦志は焦ってしまった。

「い、痛かった?すいませっ」
「いや、もうちょっと…柔軟ほしいよなぁ」

振り返って、お前もだよと言われて思わず二人で笑いあう。
 怒られるかという緊張は一瞬で、いつもどおりの直哉に、直哉の空気に嬉しげに目を細め、こんな空気がずっと続けばいいのにと、そんなことを敦志は願っていた。

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あきゅろす。
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