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新月を追って

「中西ちゃん、着いたよ」

 合宿地に着くまでの時間は長く感じ、敦志はいつの間にか眠ってしまっていた。揺り起こされ、眠い目を擦りながら促されるままに松島とバスを降りると点呼の後に宿舎に荷物を置いてから、時間が惜しいとばかりに軽い練習がされることとなった。

 グラウンドにもどった敦志はビブスを受け取りながら欠伸をし、空気を大きく吸い込む。冷たいくらいの澄んだ空気に思わず見開くとそこは、南森にはないような大自然だった。視線の先に連なり聳え立つ山々と、不釣合いなグラウンドとサッカーゴール。こんなところにグラウンドがあることが違和感なくらいだ。


「大丈夫?中西ちゃん」
「え、あぁ…はい」

 おいしい空気や、少し寒いくらいの気温が気持ちいいとおもっていたことが少し照れくさくて敦志はビブスを着込んだ。心配そうな表情のまま、松島が離れていくと敦志は直哉を見やった。
 今現在、敦志は痛めていた足も予定より早く治りつつあり直哉とサブ組の2トップを組んでいる。その為、より良い連携や意思疎通の為に柔軟運動もペアであることが多いのだ。


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