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新月を追って

「ちょっ…ダメですって」
「なんでー?」
「なんでって…ここじゃちょっとっ」
「いーじゃん、いっそ見せびらかしちゃおうよ」
「お、お断りです」
「ケチっ見られたって減るもんじゃないのに」
「そーいう問題じゃ」

 痴話喧嘩を遮るように誰かの咳払いが聞こえ思わず、辺りを見回した敦志が凍り付き、つられて松島も見やると直哉と目が合った。
 咳払いをしたわけではないようだが、音楽を聴いているのかヘッドフォンをしたまま二人のほうを見ていた。



――み、見られちゃったよなぁ、うわーっ…

 心なしか困ったような表情を浮かべる直哉に何処から見られていたのかと考え羞恥で真っ赤になってしまった敦志は顔を背けると雑念から逃れるように頭を抱え込んでしまった。
 気にしなければ良いのだろうが直哉の前で松島とこのような行為をし、見られたことに罪悪感めいた感情が敦志の胸を締め付ける。

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あきゅろす。
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