新月を追って
20
直哉を好きだった気持ちは忘れよう、敦志がそう決めたのは数日後のことだった
「あれ!珍しいじゃん兄貴っ」
朝、いつもと変わらず台所に立っていた敦弘が目を丸くした。いつもより随分早い時間に敦志が二階から降りてきたのだ
「そ、んな驚くこと?朝練だよ朝練」
「へー…朝練でも寝坊するくせに」
「いいだろー?き今日は早いんだから」
朝練は事実だが最近悩んでいるせいか、よく眠れないでいたのも事実であった。腫れぼったくて重い目蓋を擦りながら反論する敦志だったが
「あー目!擦らない」
「だって痒いし」
「もーっ飯食っちゃえよ!待ってろよ今出すから」
「うん、でも敦弘も一緒食べよう」
そう笑いかけられると敦弘は嬉しいのか表情を崩し誤魔化すように手早くフライパンから料理を皿に移しテーブルに置く。
敦志はそんな敦弘の様子を見ながらご飯と味噌汁を盛りテーブルに並べる。二人して座っていただきますをするといつもの朝食の風景になった
「テレビつける?」
「ん?いい、それより…敦弘に話しておきたいことあるんだけど」
「え、なに?」
突然の兄の改まった様子に敦弘はキョトンとして動きを止める。
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