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新月を追って
10
 その人物は松島だった。松島は敦志と目が合うなり気まずそうに踵を返して横道に飛び込んでいってしまった。今まで鉛のようだった身体が嘘のように敦志は気がついたら走り出していた

「待って!」

 横道に曲がるとそこは明るいアーケード街とは別世界、頼りない街灯と月明かりしかない暗い小路だった。それでも敦志は走る速度を緩めなかった。人も少なく静かな通りにバタバタと二人が走る音だけが響く

「待ってってば!」

 漸くその服を掴んで引きとめる頃には互いに少し息が上がっていて沈黙を肩を緩やかに上下させる吐息が埋めていく。やがて観念したように背中を向けたまま松島が口を開いた

「ごめん、ごめんねっ偶然直哉と一緒に帰るの見ちゃってさ……見て帰るつもりだったの。見たら諦めがつくかなって……実際、中西ちゃんたち良い感じだったし帰ろって思ってたんだけど、やっぱ気になって戻って……ホント、なにやってんだろ」

 誤魔化すように必死に言葉を紡いで笑い飛ばそうとする松島。けれどいつものような口調にはならずにそれが悪いことをしたと、敦志の反応を恐れているのだと思わせた

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