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新月を追って
11
「さサイテーだよね、こりゃフラれてもしょーがなっ」

 松島が背を向けたまま必死に言い訳を続けるのを見て敦志は再びなんだか泣きたい気分になり、それを誤魔化すように松島の背中に抱きついた。
 松島は突然のことに言葉が出ずにただ真っ赤になり自らの腹部にしっかり回された敦志の手にドキドキしながらも恐る恐る自分の手を重ねてみる。すると嫌がられることもなく松島はますます心臓を高鳴らせ、敦志はどうしてしまったのかと振り返ろうとした時、背中が心なしか湿ってきたのに気づいた

「中西ちゃん!?」

 敦志は答えずにただ更にギュッと抱きしめてくる

「ちょ、ちょっと待って」

 そのまま大人しく抱きしめられているかと思った松島は急に身動ぎしだした。泣きそうになっていた敦志は手にそれほど力を込めておらず直ぐに手は解け身体も離れてしまった。
 松島が振り返ると寂しそうに眉を八の字にし敦志が見つめてくる。それだけで松島は敦志を押し倒したいくらいに射抜かれてしまった。けれどそこをグッと我慢して敦志を抱き寄せる。するとそれを待っていたかのように敦志の腕が松島の背中にまわされギュウッと背中を握り締めて

「ぅわあああっあああああー」

 それはもはや慟哭だった。松島はただ背中を撫でてやることしかできなかった。


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あきゅろす。
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