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新月を追って

 それからどうやって店を出たのか分からなかった。直哉はとても心配していたが敦志は上の空でただただ一刻も早く直哉の前からいなくなりたいとばかり願っていた。そうでもしないと場所も直哉が見ているのもかまわずに泣き崩れてしまいそうだった。
 ふと我に返り、アーケード街の真ん中で立ち尽くしていることに、辺りに直哉がいないことにホッとした。その途端にドッと疲れが襲ってくる。絶望に似たそれは敦志をそこから歩き出すことさえ忘れさせた。
 もう日が沈んだというのに店や街灯が明るいアーケード街は引っ切り無しに人が行き交い敦志の横を通り過ぎていく。不自然に立ち尽くしていたとしても気にする者は誰もいない。敦志は感情を無くしたように無表情なまま俯いていた。
 どれくらいそうしていたのだろうか? アーケード街を抜けた先に横たわる大通りで誰かが無理な運転をしたのだろう、タイヤが擦れる音がアーケード街に響き、敦志は何の気なしに顔を上げた




 行き交う人々の中で一人だけ、敦志と同じく停止ボタンを押されたように立ち尽くしている人物と目が合った

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