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新月を追って

「俺、あの、この前……松島さんにこ…告白されてっ」
「え」
「いや、あの、付き合ってって……」

 やはりあの秘密は言えなかったが敦志は誰にも言えずにいた今一番の悩みを直哉に打ち明けはじめた。内容の恥ずかしさに俯きながら必死に言葉を紡ぐ敦志は、直哉が一瞬ショックそうに眉を顰めたことに気づかなかった

「……でも、俺はっ」
「良かったじゃないか」

 悩んでいる本当の理由を打ち明けようと思った。それが直哉に対する告白につながるとしても、もう嘘は吐きたくない。そう、決意して顔を上げたのに意外な直哉の言葉に遮られる。
 直哉は俯いて搾り出すようにそう言った。その表情が見えないせいで敦志は戸惑いつつ、え?と呟く

「良かったな」

 一方の直哉は何故、激しい胸の苦しさに襲われているのか理解出来ない。ここは笑うところだろうと思っているのにどうしても笑顔を浮かべるのがつらい。けれど敦志がしあわせになるのことは自分も望んでいたはずだと、直哉は何もかもに気づかずに自分の心に蓋をした。
そして無理矢理笑顔を浮かべて顔を上げた

「ホントに良かった……心配してたんだ、でも松島さんならきっと幸せにしてくれるって。あの人、お前のことすっげー好きだもんな」

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