新月を追って 6 「そんな、泣くほど?」 驚きで思わず笑った口調と心配した視線を向けてくる直哉に慌てて涙を拭いながら敦志はコクリと頷いてどこか照れくさそうに 「はい、俺部活……やめたいくらい辛くて、そんな時優しくしてくれたの直哉さんだったから。直哉さんがいたから頑張れたってのもあって……これからも俺の……味方でいてもらえたらきっと頑張れる」 「やっぱり、なんかあったのか」 「え、いや、そのっ……」 直哉の言葉に今まで、その辛かった事を必死に隠していたことを思い出し敦志は今更誤魔化そうと慌てて目を逸らした。言ったことを取り消せたら、時間を戻せたら、なんて不可能なことを願いながら敦志はただただ言葉もなく俯いたまま やがて直哉は 「なんでも、相談しろって言ってただろ? 俺も……話しかけづらい雰囲気作っちゃってたけどな」 時折、笑顔を浮かべながら、ゆっくり諭すように話し始める。敦志はいつの間にか顔を上げ、その顔を見つめる内にすっかり直哉の言葉に心を突き動かされ、直哉になら話してもいい気がし始めていた 「お前の力になりたいんだ……なんっーか勝手に弟いたらこんなんかなとか、思ってるし。これからは何でも相談乗るからな?」 照れくさそうに穏やかな笑顔ばかり目に入って、すっかり敦志は不安も何もかも忘れて自分も照れくさくて嬉しげに笑いながら 「あ、じゃあ……今、いいですか?」 「今!?」 敦志は期待にドキドキと胸を高鳴らせながら、そう呟きながら上目遣いでお願いしてみる。 直哉は突然のことに素っ頓狂な声を上げるが何処か嬉しそうだ。緊張や期待が伝染したのか落ち着かない様子でコーラを口にする。 それでもじっと待っているとコーラを飲み終えた直哉は穏やかな笑みを浮かべて 「いいよ、話して」 [*前へ][次へ#] [戻る] |