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新月を追って

 真っ赤になったり大声を出してしまったり、席を探して直哉から離れると急に恥ずかしくなってきて更に赤くなる敦志。
 そっと振り返ってレジで注文している直哉を見て
やはり敦志は確信した


―――俺、やっぱ……直哉さんが好き、なんだ

 この気持ちに嘘がつけないと分かると同時に打ち明けたい誘惑に駆られる。
 直哉が優しすぎるから打ち明けても受け止めてもらえるのではないか、そんな期待が敦志の心を軽くする。
 鼻歌でも歌いだしそうな浮かれた気分で窓際の席に座ると暗くなった外がまるで鏡のようにガラス窓に敦志の顔を映していた
 その自分の顔に今、忘れていたことを思い出し、人知れず耐えるように手を握り締めた


―――そうだ……あんなの知られたら嫌われる

 打ち明けたくて口元まで出かけていた言葉はキツク結ばれた唇からこぼれ出ることはなかった

「中西? どうした?」

 気づくとトレイを持った直哉が向かいに座るところで、次に目の前のテーブルにトレイが置かれた。
 いつもなら嬉しくてたまらないはずの甘いおやつさえなんだか色あせて見える。
 敦志はなんでもないことだけを告げてアップルパイの包みを手にした

「そうか? でも急に元気なくなって……」
「ホントっなんでもないです、それより話って?」

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あきゅろす。
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