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新月を追って

「中西?」

 それは突然だった。放課後、部活もなく相変わらずぼんやりと心ここにあらずな状態のまま昇降口で靴を履き替えていた敦志に思いがけない人物が声をかけてきたのだ。
 その姿が目に入った瞬間、驚きもあって敦志は言葉もなくただ目を見開いた。ぼんやりと悩みで曇った瞳が我に返り悩みも忘れて彩を取り戻していく

「なお……やさん?」

 直哉は少し照れくさそうに頷いた。ここ最近の騒動が嘘のように前と同じ雰囲気の直哉がそこにいて敦志は食い入るように見つめていた

「突然悪いな……久々に一緒帰らないか? 今日部活ねぇし」

 そのまま敦志が一言もしゃべれず驚いた顔のままなので直哉は困ったように笑いながらそう誘ってきた。目の前の事態が現実とは思えない敦志は自嘲するように笑い目を伏せたあと

「夢かなコレ……」

と溜め息を吐いて自分の頭をゴツッと叩いた。けれど敦志の希望に反して夢ではなく目は覚めなかった。直哉が心配そうな顔をして

「ごめんな、今まで……避けるようなことしてたのに急にこんな混乱するよな? ……謝りたいんだ。ここじゃなんだからその、帰りどっか寄らないか?」
「謝る……?」

 未だ事態がよく飲み込めずにぼんやりとしていた敦志は漸く千田が直哉に一言物申してやると言っていたのを思い出した。この様子だと千田は上手くやってくれたのだろう、敦志はぎこちない笑みを作り

「……じゃあ○ック行きましょう」

 そう答えるのがやっとだった

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