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新月を追って

「…体調管理も出来ないような甘ったれた意識じゃプロなんざなれんぞ」
「あ…」
「まぁ、お前がなるつもりがないっていうなら、もう言わないがな…どうなんだ」

 すっかり恐縮してしまって俯いたまま応えられない敦志に再び、監督の溜め息が耳に入る
 こうなっているのは自分のせいではない。けれどそんなこと他人が知るわけはなく、腰が痛くて休むという事実だけで判断される。そのことがやるせなくて悔しくて敦志は自分の上着の裾を皺が出来るほどキツク握り締めた

「どっちにしろ、お前明日からベンチから外すからな」
「そ、そんなっ」
「嫌だったらもっと真面目な姿勢見せろ、確かにお前はそこそこ上手い、けど気持ちの面じゃ他の奴らに全然負けてんだ、もっとしっかりしろ!」

 不意に敦志は視線を上げグランドの方に目を向けた。1年生にいたっては準備に忙しなく動き回っている。
 設楽南森は部員数が多い上に、グランドは野球部と半分ずつの使用の為、どうしても余ってしまう1年が普通の学校であればマネージャーがするような雑用をしなければならなかった
 けれど敦志は入部早々にそうする必要がなくなっていた。そんな環境で頑張れなかった、ということなのだ
どんな理由であれ

「…もう、帰っていいぞ」
「はい…すいません、お先、失礼します」

 深々と礼をして敦志は踵を返し、不意にグランドを見ると全員がボールを使った練習をしていた。1年も隅っことはいえ参加しているようだった。それに比べたら自分は、と寂しい気分になりながら頑張らなくちゃ、と決意を新たに敦志はグランドを後にした

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あきゅろす。
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