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新月を追って

 TR県では強豪に入る設楽南森はインターハイ県予選、決勝で敗退してしまい、今年は本選には出場出来なかった。それでも練習は続く
 放課後、昼間照り付けられたグランドは熱を未だ逃がしきれないまま見ていると気分はまるで砂漠だ。
 既に着替えた部員たちがユニフォームでどうにか扇いでいるのを横目で見ながら、敦志は小さな作りではあっても屋根のある、監督が座るベンチへ向かった

「あ、あの…監督?」
「なんだ」

 ちらほらと部員たちが部室からグランドにやってきて思い思いにストレッチなどしているのをみていた監督が敦志に視線を向ける。威厳を感じる風貌に見つめられると、つい緊張してしまい敦志は俯いた

「すいません…今日、休ませてもらって…いいですか?」
「なんで」
「…腰が……痛くて」

 すると監督は視線を反らして深い溜め息を吐いた。恐る恐る聞いた為に、余計悪い気がして敦志が慌てた様子であの、と再び口を開いた時だった

「中西、お前……スポーツ推薦だろ、やる気はあるのか」
「あありますっ」
「だな、プロになりたいって言ってたよな」
「…はい」

 プロ、かつての自分の夢を聞かされ、敦志は目を見開き、そして俯いた。そう、設楽南森に入学した当初はそうだった。夢に向かってただ部活に、好きなサッカーに励めばいいだけ、しあわせだと思っていた。
夢が未来が揺らぐなんて思ってもいなかった

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