新月を追って
1
あたたかさに包まれていると落ち着く、おぼろげな意識は嫌なことも大事に胸に閉まったことも霞み思い出させない。薄く開いた目もまた同じように何も映さない
目蓋は自然と再び下りた
どこか違う場所へ意識だけ切り離されてしまったように非現実だ。頬を撫でる手のあたたかさも唇を塞ぐ柔らかな感触もまるで自らに起きていることだと思えない
これが誰なのか、なんて考えられなくて
ただ心地よくて
「あっ…」
薄く開いた唇から甘い喘ぎが漏れる。どこか他人事のように感じていた敦志は自らの声で自らに起きていることだと思い知らされる
敦志の嬌声に気を良くしたのか、誰かが未だ繋がったままの楔を再び打ち込み始めた
「は……ぁ………ぁっん…」
獣の様な激しい交わりでなく、それは優しく味わうような行為だった。途切れ途切れ、でも確実に甘い吐息が漏れ、敦志も昂ぶっていると知らせる
「あ、…ぁっ…ん……ん…」
唇が塞がれる、キスされている。喘ぎがくぐもったものになり激しく内部を抉ってあたたかいものが流れ込んでくる
唇が解放され、髪が撫でられる。自らの乱れた呼吸を聞きながら枕に緩慢に頬摺りする
「それでいい…大人しく、このまま…」
―――俺を、受け入れていろ
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