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新月を追って

 バンッと大きな音がして、その場が静まり返り全員が二人に注視していた。
 それでも胸倉を離さずに外村を睨んでいると見かねた部員から声がかかる

「おいおいケンカかよ」
「お前らどうしたぁ?」
「なんでもない」

 呆れたような呼びかけに応えたのは外村だった。再び、なんでもないよな?と今度は敦志に尋ねる。
 言葉に詰まったまま敦志は唇を噛み締め、掴んでいた胸倉を離した。
 そのまま呆然と俯いてしまった敦志が外村に危害を加える気がないと分かると少々気にしながらも他の部員達は先ほどのようにガヤガヤと着替えだす
 それを見計らったように外村が一歩近づいてきたた。驚いて見上げると、意地の悪い笑みを浮かべて

「言いたいことがあるなら聞いてやる、後でな」

 そう言い捨てて向けられた背中に何故だか焦って敦志は外村の手首を掴んで引き止めてしまった。
 手首を掴まれた外村は怪訝な顔で振り返った。けれど敦志は頭に血が上っていて止まれなかった

「明日っ放課後に3階の空き教室に来いよ」
「…行ってやるから離せ」

 フン、と鼻で笑った後、外村はそう言いながら敦志の手を振り解き背中を向けて去って行った
 その背中を見送りながら敦志は治まらない腹の虫に思考を奪われて、外村の意味深な笑みなど気にも留めていなかった

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