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新月を追って

 席について次第に落ち着く息遣いに反して心は安堵することもなく、何かに追い立てられているかのように落ち着くことはなかった
 それは放課後になっても続いた

「おはようございまーす…」

 気分が晴れぬまま部室のドアを開けると、中にいた部員たちは口々に明るく挨拶をし返してきて、直ぐに何もなかったかのように自分たちがしていたことをし始める
 敦志はその横をすり抜けて自分のロッカーへ向かった。向かう途中視線を感じてふと視線を上げると思ってもいない人物と目が合った

「直哉さん…おはようございますっ」
「あぁ…おはよう」

 声を出すことさえ憚られるような気まずさを勝手に感じ、俯いた敦志だったが意を決して挨拶をした。
 もう思い出せない、以前は浮かべていた笑顔を精一杯再現しながらの挨拶だったが、今度は直哉が目を伏せた。
 そして、歯切れの悪い返事をしながら顔さえ背けられてしまった
 その横顔を見ながら敦志はやはり避けられているのだと確信し、そして重い足取りのままロッカーへ向かった


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