新月を追って
6
「じゃあ、ワガママになっていいの?こんな風にさ…」
松島の突然の呟きに視線を向けるより先にその指に顎を持ち上げられ、そうかと思うと唇を重ねられていた
突然近づきすぎて焦点が定まらず、敦志は自然と目を閉じていた
そこは下駄箱の近くの廊下、通り過ぎていく生徒たちの足音もざわめきも敦志の耳には入らなかった
ただ、松島の唇の感触は嫌ではなかった。そう思ったことに力が抜け思考がぼやけ、手から学生鞄が滑り落ちる
―――ガンッ
鈍い音がキッカケのように遠退きかけた意識がハッキリと戻る。途端に足音もざわめきも嫌な位に敦志の耳に入り込んでくる
気付いたら数人が松島と敦志をさも面白そうに遠巻きに見ていた
「ぁ…俺っ」
途端に羞恥心を煽られ、耐え切れずに敦志は松島を押し離し、何も考えられずに教室に向かって駆け出した
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